第12話 御曹司


 猫耳メイドに案内され、白いテントの中に入る。


 広さは5メートル四方で、長机とパイプ椅子があった。


 椅子には赤髪短髪の白いカッターシャツを着た青年が座る。


 その背後と屋内の至るところには、大量の段ボール箱が見えた。


「社長。12時に面談のご予約のセレーナ様をお連れしました『にゃん』」


 猫耳メイドは社長を恨めしそうに睨めつけながら、告げる。


 そのやり取りと、視線を見て、すぐに感じ取れるものがあった。


(はっはぁ……。アゲるプレイもできるってわけか……)


 Mの社長を喜ばせるための、Sっ気たっぷりの眼差し。


 性的嗜好が満たされれば、自ずと業務の質も上がるというもの。


(やはり、このメイド侮れない……。後でメモしておこっと)


 そう内心で考えながら、社長の正面に立つ。


 後ろには、ジェノが警戒した様子でついてくる。


 その片手には、黒いアタッシュケースを持っていた。 


「ご苦労。下がっていいぞ」


 社長は手で払うように指示を飛ばす。

 

 猫耳メイドは無言で一礼し、去っていった。


「……さて、用件を聞かせてもらおうか。セレーナ商会の元支配人」


 次に社長は黒い瞳をこちらに向け、語る。


 どうやら、こっちの身辺は調べられたっぽい。


 ただ、これは余裕で想定内。だって目の前の相手は。


「お初にお目にかかりますBMW社長リッカルド・ゼーレ。取引をしましょうか」

 

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