第19話
「はい、終わり」
「くそッ、さすがにクロスレンジは無理か」
「そうですね、弾幕張り続けてたら勝ててましたね」
「嘘つけ」
「そうですね、優しいウソです」
「一ツ橋とやるか?」
「あの人は力押しじゃないと勝てないので、嫌です」
守りが異常に固いのに、速く動けるから守りを力で壊すことになる。
攻撃に魔力操作を応用できない不器用な人だが、性能が尖がっているため問題ない。
「岩沢、それで本当に勝ってんのか?」
「どうした村上、気になることでもあるのか。ひろし手綱は?」
「高森さんにすぐ声かけるな。魔女なんだからもっと強い魔法あるだろってこと」
「それなら問題ない、詠唱時間がそもそも長いし、弾幕突破できるからそもそも守る必要なかったわけ」
「手加減してたのか?」
「そういうこと、高森君」
村上は並木さんが言うと理解してくれたようだ。
山川先生は想像していた以上に俺が強かったみたいで、カメラを構えたまま口を開けて固まっていた。
ここまで驚いているのは山川先生だけ。
ダンジョン配信部の配信を見ていなかったのは先生だけのようだ。
「予定としては今日中にボスを倒したいんですが、大丈夫ですか?」
「ひろし、どうだ?」
模擬戦が終わり、出発準備中に山川先生から聞かれるが判断はひろしに任せた。
ボス倒して4層まで急いで帰ってくれば、行けるとは思うけど。
生徒は疲労困憊だろうな。
「7層手前までの疲労で考えます」
「分かりました」
休憩層の4層から5層に入ったのは8時くらいだった。
群れの数は7体、接敵の回数は5回。
今回の戦闘は村上とサキたん以外にも、西崎、東谷とかも参加した。
3人か4人で敵と相対していたが、毎回4体くらいサキたんが倒している。
サキたんの戦闘が上手いから、他の奴らが練習不足になってしまいそうだ。
「6層へ入る前に休憩しまーす」
6層に下りる階段の前で休憩となった。
ひろしが宣言したからそうなったが、案外よかったと思う。
相手校の4人はダンジョン泊の経験が薄いのか、随分と疲れているようだった。
もしかすると、戦闘中のサキたんはそこまで考えていたのかもしれないな。
「配信一旦止めます」
バッテリー残量が思っていた以上に減っていた為、リュックの別バッテリーに接続して、配信を再開しようとしていると、後ろから山川先生に声を掛けられた。
「あの岩沢さん、ボス部屋の戦闘なんですけど、扉とは反対側に移動して撮影してくれませんか?」
「分かりました。確かに同じ画だとつまらないですもんね」
10分ほど休憩してから6層に向かう。
出てきたゴブリンは8体の群れで、鈴木が1人で多数のゴブリンを抑え、戦闘を優位に進めるサポートをしていた。
接敵は5回。
相手校の4人もこっちの5人も戦闘することができた。
相手校の中では北森が一番戦闘慣れしているようで、疲れているなりに動きが良い。
こちらはひろしがリーダーシップを発揮しているのが目立っていて、今回のコラボで最も成長していたように感じた。
「7層前だけど、4人は戦闘できそう?」
「北森さん以外は無理じゃないかな、高森君」
「それじゃあ、並木さん。4人の護衛をお願いできますか?」
「私はボス部屋入ったところでカメラ役の護衛してるから、樋山頼んだ」
「分かりました」
7層への階段を下っていると、ボス戦前の話し合いが進む。
ソロ探索者の俺からすると、すこし憧れる状況だ。
階段を下りきると、大きな扉がある。
先頭にいるひろしが、扉を押し開けた。
奥の方に背の高い筋肉質なホブゴブリン。
手前には15体のゴブリンが待ち構えていた。
「岩沢さん」
「そうでしたね、行ってきます」
戦闘が始まったのを確認して、壁沿いを移動してホブゴブリンたちの背後に移動する。
しばらくカメラに戦闘の様子を映していると、体が魔力の波に襲われた。
魔法だ。
逃れるすべがなく、魔力を循環させた状態で魔法を受ける。
「罠でも踏んだか?」
〈転移?〉
〈どこ?〉
〈やばい〉
〈誰も気付いてない〉
〈ひろし〉
〈サキたん〉
〈リカたん〉
気が付くと、場所が変わっていた。
転移がどうとか言ってたような気がするから、それだろう。
地面がごつごつした岩場から草原に、壁がなくなり背後には大きな扉があった。
洞窟だったのに、太陽が照り付けており、暑い。
たぶんダンジョンだろうけど、こんなダンジョンがあるのは上級ダンジョンだけだろう。
「おい、向こうの配信部は戦闘終わったか?」
〈まだ〉
〈鈴木がタイマン中〉
〈ひろしが指揮してる〉
〈せんせーが参戦〉
〈村上がサポートしてる〉
〈まだ〉
「終わったら、転移したこと伝えといて、上級ダンジョンで配信中」
考えてもいなかったこと、転移しても大体は同じダンジョン内のどこかだった。
それが、別のダンジョンって、帰りが面倒だ。
海外だったら密入国扱いになったりしないか、心配が増えるばかり。
〈まえ!〉
〈空見てないで〉
〈地面、赤い〉
〈何か光ってるぞ〉
〈おい〉
〈岩沢〉
「え? 赤黒い召喚陣」
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