第37話人神
「あのノートを見てひとまず分かったのはあの宗教が本当に人体実験をしていたという事実ですね」
ノートに書かれていた内容で一番気になるのは体の部位ごとに書かれていた野球選手や色々なスポーツの名前が書かれていたことだ。
あのノートのページを見た時はそのスポーツをやっているプロの人たちの体の一部をどうにかして移植しようと考えていると思っていた。
だが俺の見た限りあそこのベッドに寝ていた人は全員ただの一般人のはずだ。
「ノートに書かれてた九段って一体何なの?」
なかなか寝付くことができないのか無月が尋ねてくる。
「九段っていうのはおそらく予言中九段のことでしょう」
「予言中九段はその名の通り予言をする生き物で」
「いやこの場合はあやかしと言った方が適切かもしれませんね」
「九段は未来を予言する力を持っています」
「人々はその力を使って戦争が起こることを予言してもらったりしていたそうです」
「ただ九段には1つ弱点があり」
「九段が一度でも予言をすると死んでしまうという弱点がありました」
「九段っていうあやかしに何度も何度も予言させることはできないってわけね」
納得したような口調で言う。
「逆に言えばそれほどの代償を払わないと未来を予言することはできないっていうことなのかもしれません」
「昔から日本は驚異の力を持つものを進行の対象とし、神として崇める文化がありましたから」
「もしかしたら誰かが占い師のふりをしてその九段の力を借りてた可能性もあるかもしれません」
「俺が知る限りそんなことは歴史の本に書いてなかったのでこれは単なる妄想にすぎないですけど」
「他の国でも九段の話が言い伝えられたりはしてますけど日本よりは浸透してないみたいです」
「そういえばあのノートにもう一つ人魚の肉って書いてあったけど人魚の肉なんて何か昔の伝承に乗ってるようなのあったかしら」
「別に何かの本で読んだとかそういうのじゃないんですけどどっかで聞いた話だと人魚の肉を食べると不死の力を手に入れられるっていう話を聞いたことがありますね」
「今聞いた話をまとめると人魚の肉と九段の肉をどうにかして不死の力と予言の力を合わせ持つ人間を作ろうとしてるってことかしら?」
「あのノートに書かれていた最高の人間を作り出すっていう内容から考えても辻褄が合ってるような気はしますけど本当にそんなことができるんですかね」
「そもそもその2つの肉を手に入れることとあの部屋の中にあった大量の死体って何の関係があるのかしら」
「はっきりしたことはまだ何一つ言えませんがあそこにある死体を使って何か実験をしているのは間違いありませんね」
「今更言うのもあれだけど神棚の上に置いてあったノート勝手に持って帰ってきちゃったけど騒ぎになってないかしら」
「確実に大騒動にはなってるでしょうね」
何せ宗教が隠していた人体実験に必要な機密情報を俺たちが持っていることがバレたら本当にただでは済まないだろう。
とにかくこれ以上考えるのは明日起きてからにしようと思いその日は眠りに着いた。
俺が目を覚ますと無月も起きるタイミングだったらしくゆっくりと体を起こす。
それから車椅子に乗せてもらいいつも通りの眠気さなど一切感じさせない慣れた手付きで朝ご飯を作ってくれる。
「昨日言ってたことについて少し考えてみたんだけど」
できた料理を運びながら言う。
「昨日話してた事って?」
「九段の話」
「ああ、そのあやかしがどうかしましたか?」
「別にどうかしたってわけでもないんだけど予言した後に死んじゃうんだったら結局意味がないんじゃないかと思って」
「その予言の内容を伝えられたとしてもすぐに死んじゃうんだったらまた新しい何らかの予言ができる神様を連れてこなきゃいけないわけでしょ」
「だから人魚の肉なのかもしれません」
「人魚の肉は不死の力を持っています」
「人魚の不死の力と予言の力を合わせ完璧な人類最高の人間をこの世に誕生させようとしてるのかもしれません」
「でも結局その2つの生き物の肉はただ話で言い伝えられてるだけで実際に存在はしないんでしょ」
「ええ、実際にそんな生き物がいたらテレビが放っておかないでしょうね」
夏にやっているオカルトのテレビとかで取り上げられそうな話題だ。
朝ご飯を食べ終え少しでも宗教に関する情報が集まっていないかスマホでニュース記事を見ながら調べる。
ニュース記事を見ていると勇輝が前に教えてくれたネット掲示板のことについて思い出す。
アカウントを作ってそのままにしていたネット掲示板のページを開く。
すると前にフォローしていた鍵アカウントからフォローが返ってきていた。
そのアカウントの投稿内容を確認してみると相変わらずオカルト系の情報について発信していた。
「オカルト系の情報について発信してるみたいだけど新しい宗教についての情報は上がってないみたいだな」
「何見てるの?」
俺がため息をつきながらそんな言葉を口にしていると、言いながらスマホの画面を覗き込んでくる。
「ちょっとオカルトのことについて発信しているアカウントを見て情報収集しようと思ったんですけどそんな都合よく新しい情報はやっぱ上がってないみたいで」
「ふーん なんとなく私の偏見だけどそういう情報をあげてる人って自分の好き勝手に情報あげてるだけだからあまり信用しない方がいいと思うけど」
興味なさそうな口調で適当に頷く。
「まあ否定はしませんけどそもそものオカルト現象とか言われるものはだいたいみんな嘘だって分かっててそれを楽しんでるんですよ」
俺自身オカルトにそこまで興味があるわけでもないので実際のところはわからないが。
俺は詳しく情報をしるためそのアカウントにDMを送ってみることにした。
しばらくやり取りをしているとそのアカウントを動かしている本人と会えることになった。
「その人と会うの?」
興味なさそうに言って別のことをしていたと思ったら再び画面を覗き込んで言ってくる。
「ええ、もしかしたら新しい情報が手に入るかもしれないので」
「それなら私も一緒に行く」
いつ会えますかとDMを送るとすぐに返事が返ってきて今日のお昼頃に会ってくれるという。
支度をし待ち合わせ場所の人通りが多い場所で待っていると誰かがこっちに向かって歩いてくる。
驚いたことにこっちに向かって歩いてきたのは無月と同じ高校生ぐらいの女の子。
見た目は無月とは全く違い髪は金髪で俺の知識が偏ってるからかもしれないがいかにもギャルといった感じだ。
いやこれはただの俺の偏見だな。
「あなたが私のスマホにメッセージくれた人?」
「って2人のどっちかな?」
「俺があなたにメッセージを送りました」
「なるほど、それでこれから婚活を始めるって事でいいのかな?」
冗談ぽい口調で言う。
「そんなことをしてもらうためにあなたにこんなところまでわざわざ来てもらったわけじゃありません」
冷静な口調で言葉を返す。
そんな話DMで一切出ていなかったはずなのだが。
っていうか婚活パーティーをやるにしてもそっちはおそらく見る限り他の誰かを連れてきてはいないだろう。
そんなどうでもいいことを頭の中で考えていても仕方がないのではっきりと言葉を口にする。
「わざわざあなたにこんなところまで来てもらったのは子供の時に入っていたという宗教について教えてもらうためです」
「分かったとりあえずこんなところでずっと話してるわけにも行かないし近くのカフェに入ってゆっくり話をしましょう」
どうしてそんなことをわざわざ知りたいのというような言葉を言われるかと覚悟していたのだが特にそんなことはなくお店の中に入る。
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