第38話最後の晩餐
お店の店員に席を案内してもらい座る。
「それであなたが私に聞きたい事って何だったっけ?」
「あなたが前に所属していた宗教のことについて教えて欲しいんです」
「そうだったそうだったでもだいぶ前の話だからあやふやな部分があるけどそれでもいい?」
「構いません」
「それで具体的に宗教のどういう部分について知りたいとかある?」
「そうですねとりあえずはあなた自身がその宗教にいた時に経験した話を無理のない範囲で聞かせてください」
「分かった」
「宗教には私が入りたいって言って入ったわけじゃなくてお母さんがもともと入ってたの」
「私のお母さんは怒るとヒステリックを起こす人で1回怒ると手がつけられなくなって」
「私が宗教のことについていろいろ聞いてたら何でもいいから入りなさいって言われて」
「でもそれから怒られてもめんどくさいから宗教のことについては言わずしばらく入ってた」
「だけど私はある日とんでもない光景を目にしたの!」
今まで比較的明るくしゃべっていた口調は真剣な口調へと変わる。
「見たって何を見たんですか?」
「その時私がいた宗教の同い年ぐらいの子供たちが失敗をして大人の人に鞭で叩かれてるところを!」
「失敗ってその宗教の中で何かをやらなきゃいけないってことですか?」
「ただの音読」
「その宗教の神様にお祈りをする時に読み上げる小さい本みたいなのがあるんだけど、それを読み間違えたら容赦なく鞭で叩かれる」
「私も何回か叩かれたことあったけどあれは本当に痛かった」
無知で叩くの走っていたがまさかそれを子供にまでやっているとは思わなかった。
「その宗教に入っていた他の人たちはどんな人がいたんですか?」
もう何度か他の宗教メンバーに聞いた話ではあるが確認のため質問する。
「何せ小さい時の記憶だからっていうのとそういうのあまり気にしてなかったから、詳しくは覚えてないけど中国人っぽい人たちが比較的多かったような気がする」
俺はそれ以上その話は深堀せずに別の話へと切り替える。
「あなたがその宗教にいた時その集団が何か悪いことをしているっていうような噂が流れてたりはしませんでしたか?」
「いや特にそういう噂を聞いた記憶はないけど」
「どうかしたの?」
「特に覚えがないならいいんです」
少し俺のその答え方に疑問を持っているようではあったがそれ以上は何も聞いてくることはない。
「変な噂を聞いたことは特になかったけど変な体験をしたことはあったかな?」
曖昧な口調で言う。
「変な体験っていうのは?」
疑問の言葉を返す。
「いつも立ち入り禁止ってなってたはずの扉がその日はたまたま空いててなんとなく好奇心で途中までその中に入ろうとしたんだけど」
「入ろうとしたってことは結局入らなかったってことですか?」
「ええ、 なんとなく直感的にその部屋に入るのはやばいって思って入らなかった」
「ごめんねこんな暗い話聞いててもつまんないよね」
明るい口調に戻し冗談ぽく言う。
「いいえありがとうございます辛い話をわざわざして頂いて」
「では俺たちはこれで今日は時間を作っていただいてありがとうございました」
俺はお礼を言って店を出る。
「無月さんはあの人が言っていたことについてどう思います?」
「見た感じ嘘ついてるようには見えなかったっていうのが正直な感想」
「やっぱりそうですよね」
そんな話をしながら何の目的もなく車椅子を漕いでいると偶然ショッピングモールの前を通りかかる。
「気分転換に少し寄って行きますか?」
「あなたがそうしたいって言うなら私は別に構わない」
ショッピングモールの中に入る。
「前にも俺たちこのショッピングモールに買い物に来たことありましたよね」
「あの時は確か単なる気分転換に来てたけど」
特に何の目的もなく進めているとちょうど店の前に新品の大きいテレビが置かれていてその画面にはもうすぐ公開されるフランケンシュタインを題材にした映画の宣伝映像が流れていた。
「フランケンシュタインて確か元々死んだ人間の体だったのよね」
「ええ作品によってだいぶ違うものはありますが確か基本的な言い伝えはそうでしたね」
俺はその言葉を口にした瞬間あのノートに書かれていたフランケンシュタイン計画という言葉を思い出す。
「そうかあそこに書かれていたのは全部本当に実行しようと思ってることだったんだ!」
「どういうこと?」
「俺は今まであのフランケンシュタイン計画というノートに書かれていた名前をただの比喩表現だと思ってたんです」
「無月さんは先に家に帰っててください俺はまだ少し調べることがあるので」
前に行ったことのある図書館に向かい30年前の新聞を再び読み返そうとテーブルの上に広げる。
俺は30年前に事件を起こした宗教メンバーの人たちの顔が載ったページを確認する。
今俺が考えていることが全て合っているとすれば無月のお父さんが全ての答えを知っている
確認し終えたところでその新聞を元の場所に戻し家に帰る。
「おかえりなさい、求めてる情報を手に入れることはできたのかしら?」
「ええなんとか」
「夜ご飯ってまだ作ってないですかね?」
「今から作るつもり」
「それは良かったあまり自分から言うことじゃないと思う気はするんですけど」
「いつもよりさらに腕によりをかけてご飯を作ってもらえますか」
「微妙に難しい要求ね」
「理由はわからないけど、だったら少し食材買い出しに言ってこなきゃいけないから時間かかるけどいいかしら?」
「ええ、それはもちろん待ちます」
「それじゃあ行ってくる」
無月が家を出て行って数分したところで勇輝に電話をかける。
「真神どうしたんだよ?」
「調べて欲しいことがあるんだけど」
「何をだ?」
めんどくさそうなため息をつくこともなく尋ねてくる。
「今の宗教のトップの人たちが結婚してるかどうかについて調べてくれ」
「別にそれは構わないがどうしてそんなことを?」
「俺の考えが正しければそれがわかればこの問題を解決できる!」
自分から首を突っ込んでしまったこの問題に【
「頼む今回の件で調べてもらうことはおそらくこれで最後だ」
「分かった調べておく」
「 あともう一つだけ頼みたいことがあるんだ」
「なんだ?」
「勇輝が 前に言ってた情報屋に合わせてくれないか?」
「 普通に公園にいると思うから会えなくはないと思うがどうしたんだ?」
「俺が今考えてる推理があってるかどうか確認も含めてその人と話しておきたいんだ!」
その真剣な言葉を最後に俺は電話を切る。
ちょうど電話を切ったところで無月が帰ってくる。
「いつもより時間かかるけど待ってて」
「いいですよゆっくり待ってますから」
いつも通りの丁寧で素早い包丁さばきで刺身を切っていく。
出来上がりを待っていると、テーブルの上に運ばれてきたのは高級料理店でしか見たことがないような綺麗な盛り付け方をされた刺身が出てくる。
それからさらに美味しそうな料理がどんどんと運ばれてきた。
「いただきます」
「いただきます」
後悔がないかと言われればきっと嘘になるがそれでも自分の中である程度の踏ん切りはつけられる。
これがたとえ2人でテーブルを囲んで食べる最後の晩餐だとしても。
「今日の料理はいつものよりさらに美味しいです」
素直な言葉を口にする。
「それなら良かった」
料理を食べ終え勇輝と行かなきゃいけない場所があると説明し待ち合わせ場所に向かう。
「来たか!」
「それじゃ行くか」
「ああ」
俺は短く言葉を返しついていく。
「なんだお前今日はつれがいるのか」
「ええ、知り合いがあなたに聞きたいことがあるって言うんで連れてきました」
勇輝は言いながらさっきここに来る前に立ち寄ったスーパーで買った缶ビールをその浮浪者の男に手渡す。
それから俺は今まで手に入れた情報考えている推理をその男に聞かせた。
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