第12話猟奇的な実験
俺は今まで集めた情報から自分なりに解釈をし辻褄が合う推理を考えていたのだがそんなことをしているうちに昨日はほとんど眠りにつけず寝不足状態だ。
「あぁーーー」
大きなあくびを漏らす。
「今日はいつになく眠たそうね」
「昨日のことについて考えてたら眠りにつけなくて気がついたら朝になってて」
「別に考え事をするのは構わないと思うけど睡眠はちゃんと取った方がいいわよ」
目玉焼きにタコさんウインナーが乗ったお皿をテーブルに置きながら言う。
「いただきます」
俺はフォークで作ってくれたタコさんウインナーをさして自分の口に運ぶ。
「それで昨日の夜はどんなことで頭を悩ませていたのかしら」
まだ朝早いからなのかそもそも興味がないからなのか若干気の抜けたような声で聞いてくる。
「何と言うか今後の人生のことについて考えてました」
「ふーんそれで何か答えは出たのかしら?」
半分興味がなさそうな口調で言葉を返してくる。
本当は無月の両親2人が所属していた宗教が一体何の秘密を隠しているのか考えていた。
おそらく無月はそれに気づいた上で俺の話に乗っかってくれている。
「やっぱり未来の人生のことは分かりませんね」
「後で少し出かけてきますね」
「また情報集め?」
「ええ」
無月がちょうどシャワーを浴びたいと言ったところで俺は家を出て目的の場所へ向かった。
向かったのは勇輝が普段働いている新聞記者のビルがある目の前だ。
俺はその新聞記者のビルの前でスマホをいじりながら時間を潰す。
しばらくするとそのビルの中から勇輝が出てくる。
「はぁなんでお前がこんなところにいるんだ?」
軽いため息をつきながら言う。
「新しく手に入った情報を共有しておこうと思って」
「だからってこの新聞記者の建物の前でわざわざ待ってることもないだろう」
「俺のストーカーなのかお前は」
「とりあえずこんなところでずっと話してるのもなんだしあっちの方で腰を落ち着かせながら話そう」
それからすぐ近くにある公園に向かう。
「それでわざわざ真神が俺の会社の近くまで来るって事は何か分かったのか?」
「まだあの宗教のことについて全部把握したわけじゃないが新しい情報がいくつか手に入った」
「まあでもその中のいくつかは俺の推測がだいぶ入ってるのもあるから話半分で聞いてくれ」
「勇輝が紹介してくれた男についてだ」
「まず一つ目は宗教に入った理由について」
「その男はもともと借金を抱えていたらしい」
「どういう経緯で借金を背負うことになったのかまでは聞くことができなかったが」
「それでその男がある日今までいた会社をクビになり公園でどうしようかと悩んでいたところにその宗教の男が現れた」
「宗教の男はその悩んでいる男にこう言ったらしい」
「私があなたの借金を肩代わりしてあげましょうかと」
「宗教とか勧誘とかで騙される典型的なパターンじゃねぇか」
勇輝のその言葉には何も返さず続ける。
「本人から聞いた話によると何か怪しいっていうのは十分自分でも感じ取ったでも後がなくて藁にもすがる気持ちでその男に頼んだ」
「何か他の方法を考えようにも考える時間も余裕もなかったってわけか」
「その人の話を聞く限り家族がいたらしいからその家族にバレて心配かけたくなかったっていうのが一番大きいのかもしれないな」
「それで結局その男はどうなったんだ?」
「まさか男も借金を返すことはせずさらにただ借金を倍にされて逃げられたって言うんじゃ?」
「いや借金自体は肩代わりしてくれたらしい」
「ただその男の借金を肩代わりする前に一言あなたの借金を肩代りする代わりに、私が所属している宗教に入団してくださいって話を持ちかけられたらしい」
「それで他に選択肢を考えられなかった男はその話を飲むしかなかったってわけか」
勇輝が納得した口調で言う。
「その男に話を持ちかけたやつはもともとお金がないことを知ってたのか?」
「男の話を聞く限りだとそこまではさすがにわからなかった」
「その男と別れた後いくつか無月さんと仮説を立てて考えてみたんだ」
「仮説?」
「仮説を立てて考えたって言っても俺がただ一方的に喋ってただけのような気がするけど」
「それにしてもまだ十分な証拠が集まっていないから何とも言えないが」
「その宗教の勧誘をしてきたそいつがその男の顔をもともと知ってたとしたらもっと早く話を持ちかけてきてもおかしくないだろう」
「だからその公園で出会ったのはたまたまでその宗教に入団するという話を持ちかけ借金を言う通り肩代わりし」
「宗教からなかなか抜けづらくした」
「っていうのが一番今有力な仮説」
「その証拠に宗教に収める金額がどんどんどんどん膨れ上がってたみたいだし」
「でもその宗教にお金を納めて欲しいんだったら徐々に徐々に少ない金額でも的確にお金を納めさせた方がいいと思うが?」
「まあそこら辺は大きく人によって考え方が変わるとこだから何とも言えない」
「ただ人にかけた洗脳っていうのはいつか解けるものかもしれないしそのまま解けないものかもしれない」
「だからその男が宗教にいる間になるべく多くのお金を搾り取っておこうと思ったんじゃないか?」
「でもその男って元々お金がなかったんだろうそんなに払うお金が増えていったんだとしたらどうやってそのお金を手に入れてたんだ」
「闇金業者に借りたらしい」
「男に聞いたら最初は適当な理由をでっち上げようとしてたけどすぐに認めたよ前にしてた借金よりも倍に膨れ上がっちまったって」
「後その男にかまをかけたら宗教メンバーが誰かを担架に乗せて運んで立って教えてくれたよ」
「ただその担架に乗せられてた人が死んでるみたいだったとも言ってた」
「担架に乗せられてたやつが死んでたかもしれないっていうのはどういうことだ?」
「その理由は俺にもまだわからない」
「それにしても真神、初めて会った男の情報をそこまで引き出すなんてお前どんなかまのかけ方したんだよ」
驚きと呆れが混ざった小さなため息を漏らす。
「特に何か話術を使ったわけじゃない」
「ただそのままの話の流れで質問を繰り返しながらその情報を引き出していっただけ」
俺はいつもと変わらない平坦な口調で言葉を返す。
「それが話術って言うんじゃないのか?」
その言葉には何も返さず続ける。
「ただそれを言ってる時の男の反応は普通じゃなかった」
「反応が普通じゃなかったってどんな風に?」
「俺が何かしらの死に近い経験をしたんじゃないですかって言った瞬間に体を震わせて頭を守るようにかばってた」
「それからはまともに話ができなさそうだったからお詫びにテーブルに1000円だけ置いてその店を出たよ」
「ちょっと待て、男が見たタンカーで運ばれてたやつが本当に死んでいる人間だとしたら!」
「表向きには宗教団体としての活動をし裏では猟奇的な人体実験なんかをしてる可能性もあるってことか!」
「まだそれに関しては何の証拠も集められてないから断定はできないけどその可能性もなくはないだろうな」
「とりあえずわかったその情報を踏まえた上で色々とまた調べてみる」
「色々と手間かけて悪いな」
「気にするなこのぐらい手間でもなんでもねぇよ」
勇輝と別れ車椅子を漕いで自分の家へと帰る。
「何か新しい情報は手に入った?」
「新しい情報は特に手に入りませんでしたけど、昨日あった男の話はしておきました」
宗教が隠れて猟奇的な実験をしている可能性があるということを話しておこうかと一瞬思ったが情報量が少なく曖昧なので今は伏せておくことにした。
「その俺が教えた情報が何の役に立ってくれるかは分かりませんけど」
「ねぇ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます