元カノの妹になつかれた
青甘(あおあま)
第1話 恋愛はいつも突然変化する
そう、これはまだ寒さが残る早朝のことである
「もう別れましょう」
交際していた彼女に別れを告げられた僕は突然のことであっけに取られ走り去っていく彼女も呼び止めることもできないまま僕の初恋は終わってしまった
「なあ、もう元気出せよ。この世にはまだたくさん女がいるんだ。すぐにとはいかなくてもまた彼女はできるって」
高校時代からの友人、南条ヒカルが慰める
「でも僕にとっては初めての彼女だったんだよ・・・・・・・」
僕はどんどん落ち込んでいく
「そんなに落ち込むなって。せっかくショッピングセンターに連れてきたんだから、楽しもうぜ!」
笑いながら話しかけてくれる
僕は本当にいい友人を持ったな
「うん、そうだね!本当にありがとう」
「なあに水臭いこと言ってんだよ。当たり前だろ」
少しずつ元気を取り戻しながらショッピングセンターに入っていった
すると一人の少女が目に入る
中学生くらいの見た目だ
少女はずっと近くをうろうろしており誰かを探しているようだ
迷子かな?
「ねえ、あそこにいる子迷子かな」
「ん?ああたぶんそうだろうな。でもまあすぐにでも携帯があるから連絡が取れるだろ」
それならすぐにでも連絡を取るはずだ
周りの人は少女のほうを見ている人はいるが誰も助けようとはしない
まるで面倒ごとにはかかわりたくないとでもいうような感じだ
誰も助けないのかよ!
「ごめんけど、ちょっと彼女に話しかけてみるよ」
迷わずに俺はそう言う
「あ、おい」
僕はヒカルをおいて少女のもとに近づく
「ねえ」
少女はビクッと驚いた反応をする
「な、なんですか」
少女は不審なものを見るかのように警戒している
そりゃそうだよな
突然知らない人に話しかけられたらな
「突然ごめんね、なんだか困っているみたいだっから」
「別に困ってません。それに知らない人とは話すなと言われているので」
う~ん、見事に壁があるな
「今日は家族と来たの?それとも友達と?」
僕は構わずに話しかける
「し、知り合いと来ました。これでいいでしょう。もう話しかけないでください」
「ならその知り合いは?」
少女は黙る
「携帯で連絡はとれるの?」
「携帯は持ってません」
今どきの子にしては珍しい
なら迷子センターに連れて行こうか
そう考えていた矢先、
「おい、急に行くなよ」
ヒカルが合流してきた
男が増えたことで余計に少女は怯える
「それで?彼女はどうしたんだ?」
ヒカルが僕に聞いてくる
「たぶん迷子だと思う。迷子センターに連れて行こうと思う」
「連れて行かなくて結構です!」
少女は声を荒げて言う
「どうしてだ?」
ヒカルが聞く
「だ、だって迷子センターに行くとアナウンスされるじゃないですか。恥ずかしいです・・・・」
俯きながらおしえてくれる
「わかったよ。なら僕の携帯で君の知り合いの人に電話しよう」
「お願いですからやめてください。私はここで待っているので」
消え入りそうな声で言う
なんだかまずいことを言ってしまったな
でも、このまま放っておくのもよくないし・・・・・
「なら、少し話をしよう。いつの間にかその知り合いの子も来るかもしれないしね」
「ですから知らない人とはこれ以上話しません」
「僕の名前は伊豆川優。これで知らない人じゃないだろ」
少し無理やりすぎたかな
「なんですかそれ」
少女はクスっと笑った
少しは打ち解けたかな
「わかりましたよ。少しだけです」
僕たちは近くの椅子に座った
「改めて、僕の名前は伊豆川優。そして彼は僕の友人で南条ヒカル。僕たちは近くの大学に通う大学一年生だよ」
「よろしく」
「よろしくお願いします。次は私の自己紹介ですね。私の名前は皇朱莉と申します。
中学一年生です。」
僕たちはお互いに自己紹介をした
「それでその知り合いとは仲良くないのか」
ヒカルが突然聞く
「お、おい!急すぎるよ。ごめんね、皇さん気にしなくていいからね」
「いえ、この際お話しして笑ってもらった方がいいのかもしれませんね」
少女は一瞬悲しそうな顔をした
「私の両親は私が小学生の時に離婚しており、それからは母と二人で暮らしていました。あまり裕福ではなかったですが毎日が楽しかったです。ですが去年の冬に母は再婚しました。もちろん喜ばしいことなのですが、再婚相手の方にも娘さんがいました。その人はとても綺麗で突然のことなのにまるで本当の妹のようにかわいがってくれています。私も本当の姉のように慕いました。二人で買い物に出かけた時のことです。偶然にも彼女の友人の方に会い、話をしていた時、私を妹として紹介してくれたのですが、すごく驚かれました。こんな子が妹なのか、と。すごく悲しかったです。中学生になり彼女の母校に入学しました。そこでも先生たちに優秀だった彼女と比べられました。彼女は悪くありませんが、私は住む世界が違うといわれたかのように思いました。それからも彼女は積極的に話しかけてくれましたが、もう彼女とは関わりたくなかったです。またそのようにみられたくないので。今日はどうしてもといわれついてきただけです。そしたら迷子になってしまいました。わらっちゃいますよね?」
皇さんは途中で詰まりながらも自分の思いを伝えた
「笑わないよ。ありがとう、教えてくれて」
「でもそこまで言ってもお姉さんについてきたっていうことは嫌いじゃないんだろ?
「分かりませんよ・・・・」
消え入りそうな声で言う
お姉さんに対してコンプレックスを感じてるんだろうな
何とかしてあげたいな
「あのさ、皇さん。僕ってかっこいい?」
「え~と、かっこいいと思いますよ」
突然の質問に困惑したようだが目をそらしながら言ってくれる
嘘が下手だなあ
「フフ、お世辞でもありがとうね。」
「おっ、お世辞じゃないです!」
「僕にも弟がいてね。名前は咲っていうんだけどお世辞抜きでかっこいいんだよ。もう誰が見てもそう思えるぐらいに。でもね僕はそんな弟に対して自分が劣っているとは思ってないよ?確かに小さい頃から容姿は負けているから、僕もそんな目で見られたことはある。けどだからこそ僕は優しい人になろうと思ったんだ」
「優しい人?」
「うん、容姿で負けてるならほかのことを頑張って周りから白い目で見られないようにしたんだよ。見た目だけがすべてじゃないんだよ。だから僕は優しい人になるためにおじいちゃんおばあちゃんが困ってたら助けたり。大変そうな人がいたら手伝ったりしてるんだ。まあでもその分、偽善者とか言われることもあるけどね」
「そんなこと気にするなよ。別に偽善だろうと行動している。この世には何にもしないで傍観している人が一番多いんだ。何もやらない奴らには勝手に言わせとけばいいんだよ」
いい友達を持ったな
「それで何が言いたかったかというと、別にお姉さんのことで負けているとか感じなくていいんだよ。もしそれが無理そうだったらほかのことを頑張ればいい。それに皇さんは自分を卑下しているけど十分にかわいいからこのまま性格もかんぺきになったら完璧美少女だね」
笑いながら伝える
彼女は突然顔を赤くする
「またか…」
ヒカルがつぶやいているがいったい何のことだろう
「かっ、かわいくなんてないです!それに私は伊豆川さんみたいに頑張れません」
「確かにずっと頑張るのはしんどいよ、でも少しずつでいいんだ。それに大変なときは周りの人に頼ったらいいんだよ」
「そ、それは伊豆川さんも含まれていますか」
自信がなさそうに聞いてくる
「もちろんだよ!」
俺は彼女の頭をなでながら答える
「ご、ごめんね。つい昔の弟みたいで」
「き、気にしないでください………それにもっと撫でてくれても……」
「ん?なんか言った?」
「何でもないです!」
それからも少しずつだが話をしていった
皇さんは少しすっきりしたように見えた
よかった、力になれて
「これなら、お姉さんとも大丈夫そうだね」
「はい、まだ少し不安ですがお姉ちゃんは私のことを本当にかわいがってくれているので私も誇れる妹に慣れるよう頑張っていきます」
「そっか、それを聞いて安心したよ。ならそろそろお姉さんを探しに行こうか」
「はい!・・・・それと伊豆川さんのことお兄さんって呼んでもいいですか?」
不安そうに聞いてくる
まだ中学生になったばかりだもんな
「好きなように呼んでいいよ」
「ありがとうございます!私のことも下の名前で呼んでくれたらうれしいです」
「なら朱莉ちゃんって呼ぶね」
朱莉ちゃんはそれを聞き満面の笑みを見せた
どうやらうれしかったようだ
「それと電話かけてみるからお姉さんの電話番号と名前教えてもらえる?」
「姉の名前は皇ユレアです。電話番号は・・・・・・・」
え?
いやまさかな
僕は動揺を隠しながら電話をかける
「もしもし」
電話をかけるとすぐにある女子大生が目の前で携帯を耳に当てた状態でこちらを見ている
まだわからない。偶然僕を見つけて驚いてるだけかもしれない
「なんであんたが私の妹といるの」
マジか…
その声には怒気が含まれていた
「えっと、朱莉ちゃんが困ってるのを見つけて」
「ん?今なんと?」
口調を強めながら聞いてくる
元カレの僕と話すの気まずくないのか?
「ま、まあとりあえずカフェにでも入って落ち着いて話そうぜ」
ヒカルが助け舟を出す
「はあ、わかったわよ。ほら朱莉、一緒に行きましょう」
「うん!お姉ちゃん!」
彼女はしぶしぶながらも了承してくれた
突然の変化に驚いたようあがすぐに顔を綻ばせた
「お姉ちゃんって呼んでくれるなんて嬉しいわ、ありがとうね。でもどうして呼び方を変えてくれたの?」
「えっとね、あのお兄さんのおかげなの!」
「おにいさん???それはどちらかしら」
僕とヒカルの顔を交互に見る
頼むよ、朱莉ちゃん
僕は彼女に目配せをすると任せてとばかりの顔を向けてくる
「あのね!伊豆川さんのことだよ!!!」
彼女は自信満々に胸を張って答えた
朱莉ちゃああああああん!
「フウン????」
視線が痛い
「詳しいことは後で聞きましょう」
朱莉ちゃんは上機嫌だが僕の心は沈んでいく中カフェへ向かうのだった
元カノの妹になつかれた 青甘(あおあま) @seiama
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