第5話
おれは伯母を好いている。好いているから
もう一つ、ある。
人間には限度がある。器に水を入れていくと、いずれは
しかし、器に穴があれば、器の役割をはたせない。こっちはおれそのものだ。おれは欠けた人間である。が、人々はそれを知らず、悲観的な人間であると云う。
人々は世間である。世間とは何だ?
おれが小説で、美しい、という単語だけを書いたら読者は「何が」を求めるが、たとえ「何が」を記したにせよ、読者はそれを感じられず、おれの力量のせいにする。おれではなく、おのれのせいだろ?
おれは、机の上にある詩編つき
回想に意味はないのだ。
過去はもう取り戻せないのだ。
それなのにおれは……
ああ、きっと欠くものすらないんだな。 おれって。 学生の頃に感じた不安は、 思春期による一定期間のものとばかり思っていた。そう、人間は生きにくい世の中を、たしかに思春期で確認していたのだが、そろって屑入れに捨てちまった。おれは大人になってからも不安なままだ。ぼんやりした不安で、一切具体的にならない。
おれは不安を忘却するものか、と常常思っている。忘却しないほうがおれは、本当に人間らしくて立派であるように感ぜられるからだ。
人間でありたい……
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