第4話

 なるほど今日がその日か、おれはぼそりと云う。そして、

「あ、ごめん佐山」

「何かあったのです?」と佐山はおれに訊く。

 何かあったのです、か。おれが訊きたいよ佐山。おまえは何もなかったのか、と。おれの目はどんよりと曇っているはずだ。暗い暗い目をしているはずだ。

(なぜ気づかない? おれをからかっているのか? おまえは気づいてるだろ、なあ佐山)

 佐山と三井はすっかり困惑している。

「今日はそろそろ終わりにしない?」

 最初に口を開いたのは三井だった。


   *


 机の上……一冊の本……やや! ラヴクラフトではないぞ……小さな本でくたびれているようだ……


   *


 男はおぼつかない足取りで家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る