退院

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 ―――2002(平成14)年02月23日。


「さくらちゃん、退院おめでとう」

「ありがとうございます!」


 わたしは何事もなく、退院の日を迎えた。

 2日前にお父さんがわたしに会いに病院の廊下を走って婦長さんに怒られたけど……。

 大部屋の病室に置いてあったわたしの荷物をお母さんが入れ物(←何だったか分からない)につめた。


「さくらちゃん」

「シュウト君」

「退院おめでとう」

「ありがとう」

「あーあ。入院したのは僕の方が先だったのになぁ~」

「えっへへ~、お先ぃ~」

「………。さくらちゃん」

「ん?」

「……僕のこと、忘れないでね」

「絶対忘れないよ。だって、退院出来るのはシュウト君のおかげだもん」

「え?」

「シュウト君は諦めないっていう大事なことをわたしに教えてくれた」


 シュウト君は、首を横に傾げわたしを見ている。


「だからわたしは今、自分の足で歩けているの。本当にありがとう」

「僕の方こそ、さくらちゃんと会えて毎日が楽しかった。ありがとう」

「今度、お見舞い来るから」

「うん、待ってる」

「じゃあね、シュウト君。元気でね」

「さくらちゃんの方こそ、元気でね」


 わたしはシュウト君と握手をした。

 シュウト君は握力が弱いからわたしの手を握れなくて、わたしの手に添えただけだったけどそれは握手だった。

 シュウト君に“サヨナラ”とは言わなかった。

 だって、必ずまた会えると思うから。


 ……2002(平成14)年01月01日に倒れ入院。

 2002(平成14)年01月16日に意識を取り戻す。

 そして、2002(平成14)年02月23日に無事退院……。


 ―――こうして、色々あった54日間のわたしの入院生活は幕を閉じた。





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