2月21日
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―――それは、本当にいきなりやってきた。
「さーくらちゃん」
「はぁい」
「退院しよっか」
とっても良い笑顔で医師が言った。
「………。またまたァ~。医師~、冗談は止めて下さいよぉ~」
「いや、マジにです」
「わたし……退院、出来るんですか?」
「うん。さくらちゃんの意思で、だけどね」
「どういうことですか?」
医師が含みのある言い方をする。
「さくらちゃんが目を覚ましてから色々と検査を受けて異常は見つからなかったんだ。それに、僕がさくらちゃんに最初に言った言葉、覚えてるかな?」
「はい、覚えてます」
「退院するには、まず自分の足で歩けるようになること」
「はい」
「クリアしたね」
嬉しそうに医師は言ってくれた。
「シュウト君のおかげです」
「シュウト君の……? あ、そっか」
「それで、医師。『さくらちゃんの意思で』って?」
「さくらちゃん。君はまだ、病気の再発の可能性があるかもしれないんだ」
「え!」
医師は今は、とっても重要なことをさらっと言った気がする。
「だから、今は大丈夫でも検査を受け続けなくてはならないんだ」
「は、はい」
「そこで、まずはさくらちゃんの意見を聞きたい」
「はい」
「このまま入院してしばらく検査を受けるか。退院して一年に数回、この病院に来て検査通いをするか」
「わたしは……」
……この選択を迷うことなんてあるの?
「わたしは、家に帰ります」
これ以上、わたしのせいで家族をバラバラにしたくないから。
「分かった」
「はい」
「さくらちゃんのお父さんとお母さんの意見も……」
「聞かなくても、両親もわたしと同じ意見だと思います」
「そうですか」
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