父の苦労、母のストレス、姉の苦悩、妹の涙③

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 お母さん……。

 お母さんはわたしを産んでくれた人だから、わたしのこと分かるんだよね。

 お母さん。

 お父さんが言ってたんだけど、わたしが15日間意識なかった時、泣いてたって本当?

 わたし、お母さんの泣くところを見たこと、一度もないよ。

 でももし……、わたしが病気で死んでいたら、わたしはお母さんの泣くのを見ることになってたのかな……?

 何処の子供も母親が泣くのを見るのは一番辛いらしいから、―――わたしは死ななくて良かったと思う。

 これは看護師さんから聞いたんだけど……、わたしが見てないところで、わたしのせいでお母さん、お父さんといっぱい大喧嘩して、何度か何人かの看護師さんに止められたんだって?

 わたしには『安楽死』って選択があったらしい。

 ここで示す安楽死は薬投与とかじゃなくて、“治療を止めて何もしない”という意味だ。

 それをお母さんが否定した、らしい。

 ……安楽死、させてくれれば良かったのに。

 だって、お母さん……。

 殆ど寝ないでわたしの看病したんでしょ?

 ストレスがたまって、食事も喉を通らなかったんでしょ?

 なのにどうして、看護師さんたちが、


「さくらちゃんのお母さん。さくらちゃんのことは私たちに任せて下さい」 


 って言われても、お母さんは看護師さんたちにわたしのことを任せなかったの?

 わたしより自分の身体、大事にしてよ。

 頑固だね。

 ごめんね……。

 将来、お母さんがおばあちゃんになって困った時、わたしが面倒見るからね。

 ……お母さんにこれを言ったら、余計なお世話だと怒られると思うから、絶対に言わないけどね。


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