真相③

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「でも、お前その子のことを見てたんだろ?」

「見てたって……そりゃあ、病室の前を通れば見ちゃダメって思っても見えちゃうのよ。他人の私から見ても、その子もその子のお母さんも辛そうだった……」

「……もしかしたら、うちのさくらも……その子みたいになってたわけだ」

「もしかしたらじゃなくて、下手すりゃさくらもぽっくり逝ってたわ」

「え!?」

「『むかえがきた、いかなくちゃ』」

「は?」

「その子が死んじゃってから、しばらくしたら意識がないのにさくら、そう言ったのよ」

「それで?」

「最初はさくらが目を覚ましたんだと思った。でも目を閉じたまま、ベッドの上で左手を天井に伸ばして、その言葉を何回も言うの」

「それで、お前は?」

「さくらにしがみついた。『まだ逝かせるか!!』って叫んだ。夜だったから充分にありえた。そんで、さくら本人に『アンタ、親より先に死ぬ気?』って言ったら、静かになってさくらはまた眠ったの」

「危なかった?」

「分かんない。だけど、『そこに立ってるぅ~』

ってさくらは病室の角を指差すんだもん。マジ冷や汗かいた」

「このこと、さくらに……」

「絶対言わない」

「何で?」

「話した後、『それでそれで!?』って、うるさいくらい、しつこく聞いてくるから」

「確かにさくらなら……」

「あと父さん。その子のこと、さくらに言わないで」

「こっちはさくらが知ってるから、言っても良いんじゃないか?」

「馬鹿。父親なんだから、さくらの性格知ってるでしょ?」

「あっ。ああ……」

「人間はいつか死ぬ……。その子は、その時期がただ早すぎただけ……。でもさくらにその子のことを話したら、さくらは自分を責めるよ。さくらは昔から自分にちょっとでも関わることは、全部自分のせいにしたり、自分で背負いこむ子だから。……だから、さくらに言わないで」

「ああ」


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