無の世界②

 .





「ねぇ―――って、あれ……?」


 ちょっと目を離したら、女の子が消えた。


 ……ちゃぽん……。


「……っ?」


 一瞬、水の音がした。


「おねぇちゃぁ~ん」


 女の子がわたしを呼ぶ声もした。


「おねぇちゃぁ~ん。はやくきてぇ~」

「今、ちょっと行くから待ってー!」


 女の子の声がした方へ行くと、そこには……。


「……みっ、湖……!?」


 あり得ないくらい、大きな湖があった。


「あ、おねぇちゃん」


 女の子もちゃんといて、湖の水で遊んでた。


「もう。話の途中で勝手にいなくならないでよ……」

「えっへへ~。てりゃあっ!!」

「うわっ」


 女の子に近付くと、パシャッと湖の水をかけられた。


「もう~。いきなり何す……」


 『いきなり何するの!?』って、わたしも女の子に湖の水をかけようとした。

 でも……。


「どうしたの……?」


 さっきまで女の子はニコニコと笑っていたのに、急に真顔になった。


「……よんでる」

「え?」

「わたしをよんでる……」


 そう言うと、女の子は大きな湖に自分の足を入れ始めた。


「危な……っ」

(このままじゃ、女の子が沈んじゃう……っ)


 わたしは、女の子を止めようとした。


 ちゃぽん……ちゃぽん……。


 でも、女の子はわたしを気にせず、大きな湖の中を進んでいく。

 大きな湖だから深さはかなり深いと思ったが、女の子の膝くらいの浅瀬だった。


「…って、ホッとしてる場合じゃないっ!!」


 わたしも大きな湖に入り、女の子の後を追おうとする。

 でも……。


「……っ!?」


 そう実行しようとしたら、身体が動かなくなった。


「……ッ……!!」


 声も出ない。


(待って……待って……っ)


 一生懸命身体を動かし声を出そうとしたけど、その間に女の子の姿は大きな湖の中に消えていった。


.

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