第4話

 俺たちは、ついにやべえロボットを発見してしまった。

 見た目はロボットなのに、喋っている。

 怖い、何だこれは。こんなの、見たことがない。

 「…あのさ、食べる?」

 「………。」

 ひ。

 後ろを振り返るとキャロルは食事を持って立っていた。

 ロボットと言っても、俺より少し背が低く、でかすぎるわけではないから掌握できるような気さえしていた。

 けれど、食事も作れて、会話もできて、そんなの、おかしくないか?

 「ぐう。」

 ち、隣りですやすやと眠るこいつは、キャロルを可愛がり、手放すつもりはないという。キャロルも、行く道を定めていないようで、俺たちとともにいることを承認している。

 てか、何なんだ、こいつ。

 あまりにも性能が高すぎて現代の産物ではないよう気さえしている。

 だって俺たちが生きている世界では、人間とそん色がない程にべらべらと喋るロボットなんて、いなかったから。

 「おい起きろ。」

 隣りで寝息を立てているこいつのことを、俺は懸命に起こす。

 早くしろよ、お前の好きなキャロルが眠いって言ってんだよ。

 じゃなかった、お前が寝てるから起こして欲しいって、まったく、クソ。

 「ああ、おはよう。」

 おはようじゃねえよ、どんだけ寝てんだよ。

 まったく、くだらなすぎるんだよ。

 いい加減にしろよ、ふざけんな。

 心の中は荒れていて、しかし誰もそれに気づく気配はない。

 とりあえず、キャロルが作ってくれた飯を食う。これはマジで、死ぬほどうまいに分類できるほどの、一品だった。

 「うめえな。なあキャロル、お前外出れないの?」

 「はい、出れないし、てか出ても平気だけど、みんなが怖がるから私を作った人が外には出るなっていったのよ。」

 「そいつすげえ、独占欲の強い奴かもな。好きな女作って、放っておくんだし。勝手気ままだぜ。」

 「馬鹿なこと言わないでください。私を作った人は、老齢で、病気で死んでしまったんです。だから何も、悪くは無いんです。」

 「そうか、悪い。」

 すげえ軽い調子だな、と思った。

 俺はこいつの無神経が信じられない。

 二人そろって逃げて来たって感じだけど、でもさ。俺は別に、そんなことどうでもいいや。

 今はとにかく、

 「この町から出よう。」

 「は?あいこもいるのに。」

 「あいこは関係ねえよ。あいつは好き好んでこの町にいるんだ。きっと前の場所に戻ったって、幸せになれる気配はない。」

 「はあ、そうかよ。」

 「ああ。」

 でもこいつの言うことも一理ある。

 あいこはここで、自分の意思で生きているのだ。もちろん俺たちだってそうだ、じゃあ、どうするのか。

 俺たちはどうしたいのか、俺はどうしたいのか。

 また、哲学のような問答くり返されて、嫌ではあったけれど。

 「車があるんだ、それにこいつを乗せて走りだそう。」

 「マジかよ、高けえだろ?」

 「ああ、けど買ったよ。全財産はたいちまった感じ。」

 「やべえな、じゃあ行こうぜ。」

 「ああ、お前も準備しとけよ。お前も、キャロルも。」

 「はい。」

 「はあ。」

 俺はため息をついてその場を後にする。

 しかしこれでいいのだ、俺たちにはキャロルがいて、車がある。

 なら他に、欲しいものなど何もなかった。

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