第3話

 変な物、だなんてうわさを流されては困る。

 僕はいたって真面目に、作りたいものを作っているだけだった。

 「また完成した…。」

 はあはあと呼吸を荒げながら、僕は目の前にあるロボットに触れている。

 そんなに評判が悪いのなら薬など作らない、僕はこれから、ロボットを作るのだ。

 心に決めたことは、誰にも話していない。

 話す必要なんかないのだと思っている。

 ていうか、

 「キャロル…可愛すぎるだろ。」

 僕は自分で作ってしまったロボットが、あまりにも可愛すぎてうっとりしていた。

 元々、この町は荒廃していた。変な物を作って食わせている、何て変な、変な噂がまかり通っているのだって、死ぬか生きるかの瀬戸際、伝染病や治せない病、そんなものが溢れているからだった。

 僕は両親をそうやって無くしているから、誰かを助けようと思って薬を作り始めた。

 けれど、それを、お金を出してでもいいから飲みたいという人間が現れ、飲ませてみると半分は死に、半分は生き残った。

 そりゃあそもそも、死ぬか生きるかの境目にいるのだ。この結果は当然だともいえるだろう。

 が、僕は悪人として、表立っては歩けないようになっていたし、次第に僕の姿が見えなくなると噂は変質していき、この町には奇妙な集団がいて、自分たちはそいつらに食い物にされている、というおかしな発想が蔓延していったのだ。

 人間の発想って本当に不可解だ、自分の見たいものだけを見て、それを信じ込める、その強さに驚いてしまう。

 でも、かく言う僕ももれなく人間だったのだし、そして今はしなくてはいけないことがある。

 せっかく完成したキャロルだったけど、まだ喋れないんだ。

 でも、もっと遠い場所へ行けば、キャロルが話せるようになると、そういう話を耳にしていて、ぜひ、ぜひ僕はそこへ向かいたかった。

 死ぬ前に、一度だけでも。

 僕にとってキャロルは全てだったし、まさか死ぬのがこんなに早いだなんて思わなかった。

 けど、もう力が尽きてしまいそうだ。

 はあ、こんなことだったら、もっとくだらないこと、でも楽しいことを積み重ねておけばよかった。

 僕は馬鹿だ、いたって馬鹿だ。

 意識は遠のいていく、何が不幸か幸せかなんて分からないけれど、僕はキャロルを作ったことを誇りに思っている。

 この子を作ってよかった、それだけが心の中に残っていた。


 おいなんだよ、これ。

 何か、女?


 声が聞こえる。

 私は、彼が作ったロボットだ。

 かなり精工に組まれていて、実は意識というものが芽生えている。しかしそれを表に伝えるための神経がまだ足りない。そこだけを補ってくれれば、私はきっと喋れるようになるのに。

 

 「うわ、目え開けたぞ。」

 「すげえ、何だこいつ。てかここ勝手に入ってよかったのかよ。」

 「仕方ないだろ?行くところなかったんだし、廃墟っぽかったから、平気だよ。」

 「はあ…。」

 何か、すごくあきれているわ。

 この人たち、私のことを見ているみたい。

 いつぶりだっけ、かなり眠っている時間が長かったように感じている。

 まあいいか、ぼんやりとしよう。

 けど、久しぶりの起動に、私の興奮は高まっていた。

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