第2話
「マジか、あいこいるじゃん。」
「何かいつもより不機嫌そうだな、どうする?」
「一応声かけようぜ、だってほっといたら寝覚め悪いじゃん。おう、あいこ。」
「はあ…。」
俺たちは二人して、あいこの所へと駆けた。
あいこは、しかし反応を示さなかった。
それが不思議だったから、顔を見合わせていたけれど、あいこはしばらくすると立ち上がって、どこかへといなくなってしまった。
何ていうか、俺たちの存在に全く気付いていない。
そんなこと、あるのだろうか。
俺も、コイツも、あいことはきちんと知り合いだった。小さいころから知っていたし、でもどんどんやさぐれていくのは、単純にあいつが反抗心の強いガキだったから、ということは重々承知している。
あいつの母親は、そんなあいこのことをいつも心配していたし、しかしそれに対してさらに反発するように悪ぶっているあいつは、すごく客観的な目で見ると滑稽ですらあった。
「お兄さんたちさ、ああいう子。関わらない方がいいよ。」
「いや、あの。知り合いなんです。ギャルだけど、昔から知ってるから、そんな風に言わないでください。」
「ごめんね、悪かったよ。でも意味が違うんだ。」
「はい?」
俺たちは顔をしかめた。どういうことなのだろうか。
「あの子、ここで変な物食ったんだよ。ここにはさ、奇妙なものを作っている奴らがいて、それを本当に誰にも、バレないように巧妙に、文句をたれなさそうな人間に食わせているんだ。」
「私もね、気付かないうちにそういう事になっていて、今はすごく後悔している。ほら、この目、見て見てよ。」
そう言ったおばあさんの顔を覗き込むと、あ、これ。
「ふん、そうなんだ。見えていない、だって、こんなことになるなんて想像もつかないだろう?都合いいことばっかり言って、本当人間って怖いのよ。だから、でもあの子が知り合いだって言うなら、急いで連れて帰れば、まだ大丈夫なんじゃない?」
「…はい。」
「ま、私もそうだけど、あいつらに変な物食わされると、思考がおかしくなっていくんだ、だからさ、でもまだ大丈夫だよ。あの子、早く探して連れて帰りな。」
そう言われてしまった。
が、俺たちは元居たところになど戻るつもりはなかった。けれどあいこのことをほっておくのも違う気がしているし、そうだな、適当に説得して、俺たちは先へ行こう。
そういう話に結論はまとまった。
話が決まったからには、もうやるべきことは目先にある。
今日はぐっすりと、寝息を立てられそうだった。
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