二代目・荻窪のグランマからのダイレクトメール
Rinto様ごめんなさい @rintosama-gomennasai
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土曜日 3月11日
突然のDMですみません。
これしか連絡する方法がわからなくて。
どうか最後まで読んでもらえませんか。
私は二代目・荻窪のグランマを名乗って、Rinto様にサギをした者です。本当に本当にごめんなさい。許されることではないと思います。最悪の行為をしてしまいました。私は両親とうまくいってなくて、でも生きていくためにお金が必要で、だから死んだおばあちゃんの名前とやり方をまねて、こういうことをやってしまいました。
でも、おばあちゃんは私に占いや霊視の話はたくさん聞かせてくれたのですが、占いや霊視を実際にどうやってやるのかという方法は教えてくれませんでした。
なので、あの時私が言った言葉はぜんぶウソです。
怒ってると思います。本当にごめんない。許してくれませんか。
もちろんお金もぜんぶ返します。なのでどうか許してください。
それでも駄目なら、Rinto様の他にも、何人か似たようなサギをしてしまいました。その人たちも探し出して、だまし取ったお金をちゃんと返します。お金がすぐには用意できませんが、かならず約束します。なのでお願いです。許してください。
Rinto様を騙してから、私の身の回りで変なことが起き始めました。信じたくないのですが、これはRinto様が話していたアレと同じやつだと思います。
とても怖いです。私のことを視てきます。怖いです。助けてください。
―― ▽[メッセージを作成する] ――
【筆者メモ】
四度目の強制も耐えた。慢性的な栄養失調で痩せ衰え、皮膚はボロボロ、ふとしたことで青痣が出来るし治らないから、全身が見るも無惨な状態だった。まるでゾンビか化け物みたいだなと他人事のように思いつつも、私はまだ死んでいなかった。
そんな最中、SNSにこのダイレクトメールが来ていたことに気づく。
あの時私が詳しく話したことによって、彼女もまた冗談半分で「おまじない」を試してしまったのかもしれない。私にしたことを考えたら自業自得だし、そうでなくともそもそも私はこれをどうにかすることはできない。もうどうにもならないのだ。
ふと思う。私が彼女に相談し助けを求めることを「顔の怪異」に止められなかったのは、そうしたところでなんの解決にもならないと分かっていたからではないか。
嘲笑が背後から聞こえてきた。確認する気も起きない。
現実なのか妄想なのか、私にはもう判断がつかないからだ。
しかし、もし本当にそうだとすると、私が「顔の怪異」に止められない行動は全て、逆説的に「顔の怪異」の目的を邪魔しない選択肢だということになる。
つまり、「顔の怪異」からは決して逃れられない。
私は「顔の怪異」にされるがまま、玩具として弄ばれるだけ。それから逃れる手段は、自らこの命を断つということのみ。一番苦しくない方法は何なのか、少しでも気を抜いているとぼんやりと思いを馳せてしまう。私は力なく頭を振った。
しかし。
アレは一体何のために、異常行動の強制――それも私が知った・経験したことを延々と文字起こしをさせるのか。お人形遊びだろうと最低限のルールはあって、物語が始まればどんな形であろうと、その終わりというものが生まれるはずだ。
だとすれば。
最期の、私の終わり方くらいは、最低限納得がいく出来であって欲しいなと思う。その程度の救いはあっても良くないか。駄目かな。何も分からず怯えて死ぬよりか、この呪いじみたものの全容を知った上で納得して死にたい。
あとは、何をすれば良いんだっけ。
波導エリ。波導エリか。その人物の情報収集だ。
何が必要か。私は手近にあった包丁を持参することにした。
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