賃貸アパートの不可解な張り紙
令和元年十月一日
ハイツ■■■■■■ご入居者様 各位
有限会社HKHソリューション
城東管理部 斎藤
深夜の共用部利用に関するお願い
平素は当ハイツの管理にご協力いただき、誠にありがとうございます。
昨今、当ハイツのご入居者様ならびに近隣住人の方々から「深夜の共用部にて、著しくマナーに逸脱した迷惑行為が見受けられる」というクレームを複数承りました。
深夜利用時のマナーが明文化されておらず、どこからどこまでを迷惑行為とするのか区別する基準には個人差があるとは存じますが、少しでもお心あたりのある方はどうかご配慮いただきますようお願い申し上げます。
・出入りの際にドアの開閉は静かに行う
・屋上利用は時間を守る(七時から二十時まで)
・廊下や階段を通行する時は騒いだり飛び跳ねるようなことはしない
・ドアから顔だけ出して通行者などに視線を向けるような行為は絶対にしない
・目が合っても見えなかったふりをする(でないとついて来ます)
不審な行為に遭遇した場合は、自室ではなく大通りの明かりの点いている店舗に避難してください。また、交差点の交番は無人の場合があるのでご注意ください。
当ハイツの入居者様全員が快適に過ごせるよう、ご理解・ご協力の程、あらためてお願い申し上げます。
[連絡先]
有限会社HKHソリューション
城東管理部 斎藤
(TEL:080―■■■■―■■■■)
【筆者メモ】
プロット制作中の11月、モチベーションを上げるためにネット上を漁っていたところ発見した怪文書。黒塗り箇所は筆者によるものではなく、元々の画像データに施されていたものになる。その他の詳細を調べてみたものの不明。
かなり味わい深い完成度で思わず保存しておいた。
ホラーを好む私としてはこの画像が本物であればそれはもうワクワクしてたまらなくなるが、しかし誰かによる創作物だったと分かったならがっかりするのかという別にそうでもなく、むしろそれはそれで構わなかった。
なにせ、これを制作した人物はホラーの核となる要素に「顔」や顔から発生する「視線」というものを据えている。意識的なのか無意識的なのかはわからないが、それは制作者が「顔」に本能的な恐怖を見出しているということに他ならない。
普通に生きていれば触れないことはないくらい毎日触れていて、あまりに触れすぎて意識することなどないくらいのものなのに、それでも恐怖の対象物となりうる。やはり「顔」は良いモチーフになる。
だからこそ、ふと思った。
自分が思いつくくらいなのであれば、すでに先人が思いついていたものなのではないか。「顔」をモチーフとしているホラー小説を探してみるが、あるにはあるが想像していたよりも少なく、なおかつ『日常生活に溶け込んだ怪異』という切り口のものは見当たらない。そこがどうにも不思議だった。
そういえば、どういう経緯で編集部の「禁忌題目」リストに、『日常生活に溶け込む「顔」の怪異』がリストアップされる運びになったのだろう。何もないのにリスト入りされるはずはなく、何かあったから禁忌入りしたのだろうが。
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