ミルクと砂糖

「お待たせいたしました、こくゆたかブレンドです。」


 熱帯夜の外を眺めながら考え事をしていると、カチャカチャと漆器を納涼の風鈴の様に鳴らしながら店員さんが件のコーヒーを持って来てくれた。


 フレンチローストはコーヒーの中では中々の深煎りのコーヒーで、その湯気からは相当な芳醇なアロマが香り立つ。


「こちらがミルク、砂糖で御座います。ご自由にお使いくださいませ。」


 差し出された白い器が傾くとどろりと粘度のある白いミルクが器の中からきらりと光る。


 植物油脂性のクリームよりも粘度の高い、本物の生クリームがこの器の中でコーヒーに飛び込むタイミングを今か今かと待ち構えている。


 そして砂糖、少し茶色がかった角砂糖が瓶の中に所狭しとぎゅうぎゅう詰めに入っており、コーヒーの苦みに負けじと威張り散らしている。

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