今日は俺のおごりだ

「はいこれ、どうぞ。」


 店主は出来立ての蜂蜜レモン酒の入ったプラスチックカップを私に手渡そうとするが、私はそれを受け取るのに少し躊躇する。


「えっと、こちらの御代は幾らに・・・。」


「あぁいいのよ、いいのよ。今日は黒すけのおごりよ。」


 私は未だ本当に受け取っても良い物なのだろうかと戸惑っていると、店主は私の手を握りプラスチックカップを強引に手渡しつつにっこりと笑う。


「あの子に何かごちそうしてくれたのでしょう?それのお礼よ。」


「そんな、大したことしてないですよ。独逸屋のフランクフルトソーセージを少しぐらい分けてあげただけで・・・。」


「独逸屋のでしょう?さっき行ったらもう売り切れてたもの、フランクフルトソーセージ。中々食べられない物なのに。だから、受け取ってくださいな。」


 まあ確かにあの店の立地と入手のしづらさを考えればそうとも言える。


「まあ、それはそうですね。すいませんが遠慮なく頂きます。」


「どうぞどうぞ。飲んでもらえれば黒すけもきっと喜ぶわ。」


 そういえば肝心の彼は何処に・・・、あれ居ない?

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