目線の先
彼の背中にも何故かその影が見えるような気がする。
彼の貫禄のあるその背中、そして人間の言葉を理解しているとしか思えないあの態度。
俺について来いと言わんばかりの歩き方。
人間を恐れて生きてきたというよりは、人間に愛され人間に近しい所にいた猫だからこんなに堂々と祭りの中を歩けるのだと私は思う。
彼は誰に愛されたのか、もしかしたら彼の人かもしれないけどそうじゃないかもしれない。
でもきっと彼の人の様に、とても大切に我が子のように接していたのだろう。
彼はたまに振り返っては、人混みの中に紛れる私を見つけ出してついて来ているかを確認しまた威風堂々歩いて行く。
彼は私をどこに行くのだろうか、いや私をどこに連れて行ってくれるのだろうか。
人を避けて避けて、たまに上を見上げては自分の居るところを長いひげと輝く瞳で想像して、私が付いて来ているのを確認してまた歩く。
もうあっという間に祭りの端っこまで歩いてきてしまった。
すると彼はピタッと足を止め、誰かに愛らしくにゃあと鳴いて何かを要求している。
私が彼に追い付くと彼は私の方を向いて、また一声にゃあと鳴き、そして先程の誰かの方を向く。
その先に合ったものは、ドリンク類を提供している出店だった。
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