ねこの証明

 彼は私の事など気にする事も無くてくてくと、祭りのはずれから祭りの中央をゆっくりとてくてく歩いて行く。


 横を通る客からは彼のまるでレッドカーペットを堂々と歩くようなこの姿に、歓喜の声や困惑の声を思わず漏らす者もいる。


 だがその当人は全く意にも介さず、私について来いと言わんばかりに祭りの奥の方へ歩いて行く。


 私はこの威風堂々とした彼の姿に、またしても彼の人の影を見出し始めていた。


 そう言えば、彼の人は猫、しかも何匹もの猫を飼っていたんだっけ。


 彼の人の人生の曲がり角やテーブルの傍らには常に猫、猫、猫だらけ。


 家に住めば自然と野良猫たちが集まり、その野良猫を世話するうちに列が出来てしまうほどの猫たちが集まってしまって、終いにはそのうちの数匹は堂々と彼の人の家の中を歩き回って仕事のお手伝いをしていたとか。


 さらにその猫たちが招き猫の様に仕事を運んできて、その猫に関するエッセイ、ねこの証明まで作ってしまったのだ。


 また、その他にもねこ写真俳句なんてものもあって私は特に、


“通い猫ねだる度ごと背丈伸び”


“夢さめて昼寝の後も予定なし”


 この2つの俳句が大好きだ。


 この俳句に添えられた写真も、猫のありのままの自由な姿を猫に気遣わせること無く映し出していて何とも心が温かくなる物だった。

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