そっぽの先

ねえ、貴方どこから来たの?

・・・。

彼は頭を撫でられながら鳴かずに目線だけで、すぐ横にある坂の上の方をすっと何気なく見る。

そう。坂の上から来たの。ソーセージは美味しい?もっと食べる?

・・・にゃああ。

私の方を向いて自らの鋭利な八重歯を見せつけるように、欠伸のような大きな口を開きそうだと言った。実際にそう言ったのかは解らないが、恐らくそう言ったのだろうと私は感じた。

あなた、遅くまで居ていいの?早く帰らないとおうちの人が心配しちゃうよ?

私がこう言うと、彼はそれぐらいわかってるわと言わんばかりにプイッとそっぽを向く。

我が家の近くで迷い猫のチラシが掲載されているのをしばしば見ており、彼もきっとそうなってしまうのではないかと心配になっていたが、この様子を見るにそれは問題なさそうだ。

彼が無事に帰れそうだと私がホッとしていると、私の気持ちを知ってか知らずか彼はそっぽを向いた方にとことこと歩き始める。

ちょっと、どこ行くの!?

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