卑しい大人

その瞬間彼らは振り返りつつ、私の事を信じられないという仰天とこの豪遊を羨ましく思う気持ちを合わせた目で凝視する。


私は大人げないとは思いつつも、子供に向かって大人の余裕を見せつけるある種の下卑た笑みを浮かべて彼らの方をチラリと見やる。


どうだ、これが大人の余裕だ。フランクフルトソーセージの2本や3本程度どうって事は無いのよ。と中々に最低な大人の見栄を張る私であった。


私の注文を受けた店員さんは鉄板の外縁に置いてある予め余熱で温められたソーセージをさっと中央に寄せ、その過剰とも言える火力でジューっと一気にソーセージの皮に焼き目を付ければとあっという間にフランクフルトソーセージが完成する。


焼き目が出来上がる瞬間の湯気と香り、これが立ち昇る度に周囲の人間の消化器官を刺激し腹の虫を呼び起こさせこの列へ引き寄せる。私の後ろにはまた長い列が出来ている。


私は問題なく食べる事は出来るが、後ろの人はどうかな。食べられ無かったら可哀そうだ。


でも私は食べる、食べられなかった人よ、許せ。


店員さんにフランクフルトソーセージ3本をビニール袋に入れてもらい、そのうちの一本を取り出してこれ見よがしに彼らの方を向いてかじりつく。


先程までマシンガンの様に連発していたあの軽口は重く唇を閉じ、いかにも悔しそうに奥歯を噛みしめていた。


その様子を私はフランクフルトソーセージの付け合わせのマスタードやケチャップとして、勝利の美酒と共に頂いていた。

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