独逸屋の大きなソーセージ

 この夏祭りでは玉川学園前の商店街の出店だけが出店している訳ではなく、周辺の有名店からも出店がある。例えば私が今並び始めたこの手作りハム・ソーセージの店、独逸屋だ。


 独逸屋は玉川学園前に店舗があるわけではなく、この玉川学園前の商店街から歩いても公共交通機関を利用しても同じ1時間程度かかる成瀬台にあり、普段から利用するには少しハードルが高い。


 有体に言えば立地条件が悪いのだが、それ故に地元に愛される隠れた有名店だ。


 しかしこの独逸屋の商品の味、そして品質は立地条件を補って余りある物があり、その名声は成瀬台だけにとどまらず町田市内全体に轟き渡り、ここ玉川学園前の祭りに出店すればあっという間に50人程の行列が出来上がるのである。


 私はこの列に並んだ事に既に後悔し始めている。


 1つはやはり有名店だというだけあり、お目当てのフランクフルトソーセージが売り切れで買えず、無駄足に終わってしまうかも知れないという事だ。


 確かに人気があるのは熟知しているが、さすがにここまで並ぶとは思っていなかった。


 目の前で売り切れてしまっては、私の胃を悲しませてしまう事になる。


 そうなれば暴飲暴食、誰が私の胃を止められるだろうか、いや居ない。


 きっと出費も摂取カロリーも青天井になってしまう事になるだろう。


 そしてもう1つ、この何ともうっとおしい目の前のマセガキの集団だ。


 私が大人しく何も言わず静かに並んでいると言うのに、私の方を向いてニヤツキながらソーセージだのウィンナーだの大きいだの反り曲がっただの、わざと私に聞こえるように大きな声で口にするのだ。


 うるせえポークビッツ共、満足な身長も無い癖に生意気な口聞いてるんじゃねえと心の中で中指を立ててケツに突っ込む妄想をして何とか心の平静を保つ。


 見ていろよガキども、大人の財力を舐めるんじゃないわよ。

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