祭りの入り口

 珈琲俱楽部からほんの少し歩くとすぐにT字の交差点に当たる。


 何時もなら少なくない往来のある車道、その真ん中には威容を放つ消防車がこれでもかと鎮座し祭りの中を歩く歩行者を守る守護者と化している。


 その威容を放つ姿はまさしくヒーローという出で立ちであり、小さな子供達が寄ってたかってその体中のあちこちを触り、サイレンすら鳴らされても顔は赤くすれども怒りはしない。


 そしてその守護者が守るのは、その先にある歩行者天国と化した玉川学園前の祭り会場だ。


 まだ19時前だというのにあっという間に人、人、人、人の群衆によって埋め尽くされている。


 交差点間のたった1区間、150メートルほどの間に出店が並び、その出店で買い物をしようと人が並び、人混みが滞留している。そこにはもう既に5000人程の人が集まっているように見えた。


 やはり玉川学園前の夏祭りの規模はやはりおかしい。


 街の規模に比べ、祭りにおける集客力が段違いに多い。


 私が用事を済ませようとこの街に来ると、日中は初老の御婦人方が買い物などで出歩く姿しか見られない。それもちらほらと、100mに10人も居れば多いほうで、まさしく長閑という言葉通りの街なのだ。


 それだというのに夏祭りとなると、一体どこから湧いたのか解らない程の人だかりが集まる。しかもその大半がティーンエイジャー、もしくは子連れの親子であって集客層がかなり若いのである。


 そして何よりも驚くべき事は今日明日の2日間に渡って行われているのは北口のお祭りであって、さらに翌週は南口のお祭りが同様に2日間行われる。今日は2週にわたって行われる祭りの4日間の内のたった1日目だというのだ。


 このお祭りの集客力たるや、周辺の店舗における半年間の売上にも匹敵するのではないかと驚嘆の念を禁じ得ない。

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