青春と酷暑の湿った空気

 改札口の周辺は多くの、恐らく中高生、そして着飾った大学生が友人や恋人、これからそうなるのであろう人々を待ち合わせている。


 なんと煌びやかな衣服であろうか、若い子は流行やファッションにやはり敏感でセンスがある、と感心しながら歩く私。自らの服装が本当に恥ずかしくなる。


 眩しい輝きを放つ人混みを通り抜け、登り窯の様な熱風が駆け上って来る階段を降りると、改札口で待ち合わせしていた若者達よりも多くの人々が熱を帯びた思いを胸に商店街の方へ向って歩いていた。


 今日ばかりは贅沢をできると興奮気味の小学生、しおらしくたどたどしい様子で手をつなぎながら連れ合いそろって歩くカップル、男友達と青春を謳歌しようと数人連れ立って歩く高校生達。


 皆、あの熱気高まる祭りの会場へ、希望と興奮を携えてはやる気持ちを抑えながら向かって行く。


 全く忌々しい、こういう青春真っ只中の空気に当てられるとなんだか段々と腹立たしくなる。そうですよ、私には相手などいません。ばーか。


 そうこうするうちに、というよりも1分も歩く事無く私は彼の方にとって大事な場所である目的地に着く。玉川珈琲倶楽部だ。


 通りに面した側は木枠で覆われたガラス張り、所々にステンドグラスを散りばめたアンティーク調の手すりで仕切られたテラス、そして店内もアンティーク家具を配置し落ち着いた空間を演出した、シックで雰囲気のある店だ。


 正直に言うと私にとってはスターバックスやドトール、タリーズなどの数あるコーヒーショップよりもダントツにこの玉川珈琲倶楽部の方が好きだ。


 今すぐにでも、この店に入って彼の方のその足取りを感じ取りたいのではあるが、この夏まつり期間中は22時まで営業時間を延長している。


 折角玉川学園前の夏祭りに来たのだからせめて出店位は楽しまなければ、珈琲倶楽部は22時まで待ってくれているのだから、と私は先ず祭りの方を楽しむ事にしたのだった。

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