青春の光とその影

 列車の両開きのドアが開き良く効いた冷房の冷たい空気が酷暑の車外に漏れ出し、代わりに車内へしっかりと熱せられた温風が威勢よく飛び込んで来た。


 数十分ぶりの熱に晒されてきゅっと引き締まっていた汗腺が一気に開く感覚を覚える。


 自分で決めた事とは言えこの酷暑の中を歩く事に躊躇してしまう程の暑さ、それに私の脚は拒否反応を示すが如く足が竦んでしまった。


 だが先程の彼らがまるで急かすように後から軽くプレッシャーをかけ、私の事を駅のプラットホームへと追いやり、覚束ない足の私を押し退け、階段まで連れ立って向かって行く。


 彼らの横顔は日常の授業という苦行から解放された満ち足りた笑顔で、夏休み一週目の万能感を含めた青春の味を噛みしめているように見えた。


 私はどうだろうか。日々の苦悩に悩まされ彼らのような純真な顔が出来るだろうか。


 きっとそんな顔に二度となる事は無いのかもしれない。正直言って彼らが憎い程に羨ましい。


 元気に階段を駆け上がる彼らを横に私はエレベータを使ってゆっくりと改札口へ向う。


 彼らの様に汗を振り撒き健康な体を見せつけるわけには私はいかない。汗をかこうものなら白い服が透けるどころか方々に迷惑を掛けかねない。


 服の後ろを手で押さえながら彼らの活発な様を横目に改札口に向かってゆっくりと昇る。

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