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 確かに図書館はあった。事前に調べたとおり音楽ホールとくっついていて、ぱっと見ここに図書館があるということがわかりにくい。入口にも「ひかりの森ホール」と施設の中身がよくわからない名前が書かれているだけだし、名前で損しているような気がする……。

 それはともかく、さっさと本を返却してしまったのでお使いは終わりだ。母さんには正午までに帰ってくるように、としか言われていない。

 図書館の中を見てみることにした。けっこう広くて明るい。単行本や文庫本のほか、雑誌や古い新聞も置かれている。小さな子供専用のスペースもあって、保育園児くらいの子に小さな声で絵本を読んであげている女の人がいた。

 カウンターの近くに貸出用のパソコンが三台あって、運よくどれも空いている。なおラッキーなことに、利用者登録がなくてもカウンターの人に声をかけるだけで借りることができた。ただし、十分くらいしか使えないという。

 さっそくメモを取り出して電話番号を検索する。そのものズバリのものは引っかからないけど、大体の地域はわかった。ここからけっこう遠い。車で四時間か五時間、公共の交通機関を使うなら新幹線に乗らなきゃならないみたいだ。簡単に行けるところではないと思った。

(セノオサン……セノオって人の電話番号なのかな、これ)

 どういう漢字を当てるんだろう? それも検索して調べてみた。瀬尾さん、もしくは妹尾さんという人だろうか……。でも、もしかしたら全然ちがう可能性もある。たとえば「瀬尾山」みたいな地名かもしれない。あれこれ入力してみたけど完全に一致はせず、そのうちに制限時間がきてしまった。

 収穫が少しはあったような全然なかったような――とりあえず、図書館の場所がわかったのはよかった。今度からとりあえずここに来よう。涼しいしお金もかからない。

 一人で家にいると、どうしても二階が気になってしまう。

 母さんにはかまうなと言われたし、怖い思いもした。でも、というかだからこそ、余計に気になってしまうと思うのだ。母さんが家にいればまだいいけど、一人のときはまずい。

 まだ時間はある。おれは今度は、古い新聞を探すことにした。あの家に関係のありそうなニュースが見つかれば、と思ったのだがこれも難しそうだ。なにしろとっかかりがない。ためしに去年の今頃の新聞をめくってみたけど、地方ニュースのページだけを全部読むだけでも相当大変だ。新聞はもう、何年分もある――


 で、へとへとにつかれて図書館を出た。

 頭の中が「ぎっしり」という感じになっている。当てずっぽうで探してもダメで、もっと情報を集める必要があるのだ。母さんからもうちょっと話が聞けないだろうか。

(でも、あの家のことなんか知って、意味があるんだろうか)

 そんなことも考える。何も知らないよりはいいかもしれない。でも、知ったところで何かに活かせるわけじゃない。

(いや、やっぱり知ってた方がいいはず)

 とにかく、まずは近いうちに利用者登録をして本を借りられるようになりたい。そんなことを考えながら歩いているうちにもう家だ。庭先に見たことのない車が停まっていて、あれ、と思った。銀色のミニバンだ。

 そういえば母さん、用事があるって言ってたっけ。お客さんだろうか?

 そんなことを考えていると、玄関の引き戸がガラリと開くのが見えた。

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