14
覚悟していたけど、外はものすごく暑い。
結論からいえば、家から徒歩十分以内のところにコンビニとドラッグストアを見つけることができた。母さんが「歩いていける距離にスーパーがある」と言っていたけど、地図もないのに遠征するのは命があぶないと思って、そっちはあきらめることにした。それでもじゅうぶん汗だくだ。
こないだニュースで言っていたけど、本当に「危険な暑さ」だ。おれは夏休み中の子供だから、やばいと思ったらさっさと家に帰ればいいけど、外で働いてる人は大丈夫なんだろうか? 大人になったら今よりも暑さに強くなるのか? 全然そんな気がしない。母さんのことがちょっと心配になった。
ともかく、引っ越し以来全然使ってなかった財布を使って、幼児用の小さいパック飲料とか、小分けになっているお菓子とか、小さい子が喜びそうなものをいくつか買ってみた。おれが小さいころって何食べて喜んでたっけ……? と考えてみたけど、なにしろじいちゃんが基準だったからあまりあてにならない気がする。
「ただいまぁ」
なんとなく声をかけてから家に入った。返事はない。階段を確認に行くと、水は半分くらいに減っていた。やっぱりお茶よりも水の方が好きらしい。
どうしようかな。とりあえずリンゴの絵が描かれた小さなパック飲料の封を切り、ストローを差してコップのとなりに置いてみた。
「おーい」
二階に向かって呼びかける。返事はない。
「ジュース置いといてみたからー……」
やっぱり静かなままだ。
とにかく一回部屋に引っ込むことにした。見ている間は何も起きない、というのがルールらしい。
(ちょっと子供あつかいしすぎたかな……)
なんてことを心配しながら待った。
二階にいるのが本当にお化けだったとして、それがどんな子なのかはやっぱり気になる。男なのか女なのか、だれと一緒にこの家に住んでいたのか、もしかしたら住んでいなかったのか。考え始めると答えがないだけに止まらなくなってしまう。
それに、もしかすると子供だけじゃなくて、大人の幽霊もいるのかもしれない。だったら大人ウケしそうなものも置いてみればよかったかもしれない。とはいっても「大人ウケしそうなもの」っていうのが全然わからなかった。お酒やタバコは売ってもらえないし、値段が高いものも買えない。今日だってそこそこ散財しちゃったなと思う。
実は母さんに「必要だったら買い出しに使っていいから」と言われた財布が台所の引き出しにあるのだが、ふつうにクレジットカードとか入ってて持ち歩くのが怖いので使ったことがない……とにかく、これは「ご飯の買い出し」じゃなくて「個人的な興味からの実験」なんだから、こづかいの範囲でやるべきだ。
そんなことを考えながら、ふすまの近くに寝ころんでいると、トトン、と音がした。
足音みたいな音だった。だれかが階段を下りているような。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます