第13話 有名人

 俺は有名になってから人目を気にするようになり、家に引きこもりぎみになっていた。そんな俺が外に出るきっかけを作ったのは村沢だった。西園寺から電話番号を手に入れたが、こいつには教えていない。もちろん、教える気もないし、知っている事も伝える気はなかった。村沢はダンジョンの探索者になり、俺を抜かすというのだ。


 俺はタクシーを拾い、都心にあるダンジョンの前で降ろしてもらった。村沢は遅れてくると思っていたが、建物の前に村沢らしき男が立っていた。リュックサックを背負い、リュックサックからバッドが飛び出している。金属バッドか木製かはわからない。やる気はあるのだろうけど、そんなものでモンスターが倒せるわけがない。俺が声を掛けると、村沢は怒っていた。


「遅えよ」

「いや」


 俺はそう言って時計を確認する。スマートフォンを開くと約束の14時丁度だった。


「まあとにかく行くぞ」


 村沢は俺の先を行き、俺が着いていこうとすると、「新川さんですよね」と呼び止められた。ぴちぴちのギャルの三人組がいた。年齢は皆二十代前半くらいだ。金髪に染めていて、いかにもギャルという感じがした。


「写真いいですか?」


 ギャルは横並びになる。俺は写真を撮ってくれる人を探したが、近くに村沢が機嫌悪そうに立っていたのだ。


「村沢写真撮ってくれるか?」

「はあ、嫌だ」


 ギャルの三人組は村沢の方を向き、三人の中では背の高いギャルが村沢に言うのだ。


「お願い、お兄さん、写真撮ってください」


 ギャルは谷間を強調するように前屈みになり、上目遣いで村沢を見ていた。


「新川、今回だけだぞ」


 そう言って、村沢はスマートフォンを受け取り、俺は精一杯の笑顔を作った。写真を取り終える。村沢はギャルにスマートフォンを返すと、俺の顔を睨みつけた。


「新川さん、ありがとうございます。一生の思い出になりまっす。お兄さんもありがとう」


 ギャル達はそう言って去っていった。村沢はフット鼻息を立てる。


「お前、こういうことあるのか?」

「今日で2回目かな」

「羨ましいぞ。くっそ羨ましい」


 村沢が建物に入ろうとしたとき、俺はもう一度呼び止められたのだった。今度も若い女で、村沢はそのまま建物の中へと消えてしまった。

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