第13話 王子少女の身内バレ

私について、執事さんに問われるミソラさん

…流石に胸元を見られたら、言い訳のしようもないだろう


「…こうなったら黙っていても仕方ないわね

 ええ…そういう事よ……」

ミソラさんも観念し、事の全てを打ち明けようと…


「実はカナタ王子は、王子ではなく王女だったのですな…!」

「うん?」

「継承問題がややこしくなりますからな…黙っていたのも当然……」

「わたし的には、王女様でも全然OKですよ!」

「う、うちも平気やよ!」

どっかで見た展開!?


「ちょ、ちょっと待って、そういう事じゃないの!」

あの時説得に苦労したミソラさんが

同じく説得に苦労しそうになってるの…ちょっと面白い


「ちょっとセッカちゃん笑ってる場合じゃないでしょ?!あなたも説明して!」

「セッカ、ちゃん?」

ホシヅキさんが不思議そうな顔をする


「えっとですね…私、ヒルガオ村のセッカと言います

 …ミソラさんが偶然見つけた、カナタ王子のそっくりさんです」

そんな偶然があるもんか!と疑われそうだけど

あるんだからしょうがない…ここは正直に言うしかない


「なんと…」

「え、うそ…王子じゃないの…?めちゃめちゃそっくりなんだけど……」

「ちょ…顔こねないでくださいっ」

変装してるわけじゃなくて、素でこの顔なんですっ


「王子は見つからなかった…けど、何の偶然かそっくりさんを見つけたの

 『雪』を止めるにはもう時間がないし、影武者作戦しかないと思って…」

「なるほど…事情は分かりますが……肝が据わっておりますな」

ですよね…ミソラさん、めっちゃ度胸ありますよね?

…って、あれ?意識してなかったけど、これ私も度胸あるって事になるな…

よくよく考えたら、あの時バレてたら打ち首間違いなしだよねこれ

……考えないようにしよう!忘れよう!うん!


「ごめんね…王子の身代わりなんて、あなたは認めないと思って、言い出せなかったの」

ミソラさんは執事さんに向かって、すまなかったと謝る


「…いや、それならそれで、我々にできる事をするだけですよ

『王子が帰って来た時のために、この国に平穏を取り戻す』…!」

…執事さんは、私たちが思うより、前を向いて考えることのできる人だった

結果論だけど、もっと早く打ち明けておけばよかったなぁ


「セッカ殿…国のいざこざに巻き込んで申し訳ない

 その上、娘を救っていただき…ありがとうございます」

「い、いえ!あの時は本当に偶然、落下に気づいただけでして!」

「王子が戻られるその時まで、あなたにお仕えするとお約束します」

深々とお辞儀をする執事さん

…王子のフリを続けるのに協力してくれる、って意味だよね?


「あ、え…という事は、わたしたち

 一般村人女の子に、あんなことやこんなことして迫ってた訳?!」

「あの、その…すみません、王子じゃなくて……」

「はあああああああああああああああ!や、やっちゃったよぉ…!」

恥ずかしさから、お互いの身体を手でゆさゆさし合うメイドさんたち


「王子はいつも平然としてるから、だんだん迫り方がエスカレートしていったけど…

 普通の女の子に見せる姿じゃないよアレぇ…」

…いやー……王子でもアウトだと思いますよ、あれ


「おい、お前たちまた王子にちょっかい出してたのか…?」

「あ、まず…っ」

「そういうのはやめろと言っただろう?!」

お父さんが怒ってらっしゃる…そりゃまあ当然ですよね……


「本当にすみません、うちの娘が…」

「あ、いえ、大丈夫ですよ…ちょっとドキドキしましたけど……」

「そ、そうよね?ドキドキするよね?

 何で王子はわたしたちの魅力に気づかないかなー?」

「あ、あはは…」

王子様も大変だなぁ…

やたら迫ってくるメイドさん三人に、黒水着と包帯の闇の軍師…


「むー」 

あ、闇の軍師の機嫌が悪い

彼女は王子の補佐官だし、王子を誘惑されるのは気分がよくないのだろう


「…まあ、今までのはいいわ

 でも、王子じゃないってわかったんだし

 今度からセッカちゃんにベタベタしないでよね!」

…うん?


「えー…でも今までベタベタしてたんだし、急にやめるのも変じゃないですかぁ?」

「むぐっ…」

「セッカさんも、別に嫌じゃないですよねー♪」

「い、嫌では、ない、ですけど…」

恥ずかしいから苦手であって、嫌と言うほどではない…たぶん


「だから…そもそもメイドが王子に迫るのがダメだと、言っておろうが!」

「ほあー?!パパごめん!だからグリグリするのやめてー!」

執事さんが、三人の中でもやたら小悪魔なメイドさんのこめかみを、拳でグリグリする

思ったより愉快なご一家のようだ


「ふふっ」

そんな執事さんたちを見ていると、ちょっとうちのお父さんのことを思い出して

自然と笑みがこぼれる私なのだった

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