第14話 王子少女は休ませたい!
「はふぅ…今日も疲れたわ……」
「お疲れ様です」
ミソラさんが王子のベッドに、仰向けに倒れる
誰かが急に入って来ないし、結局はここが一番安心、という事で
私たちは、何かあるとすぐ王子の部屋に集まるようになった
「でも、四人が手伝ってくれるようになって、だいぶ楽になったわ」
何かやるたびに、ほとんどミソラさんに聞いていた時に比べたら
お城の生活にメイドさんたちのフォローが入るのは、本当にありがたかった
ミソラさんには、本当に頑張ってもらってるなぁ…
…そうだ、ここはひとつ、感謝の意を込めて…
『お疲れ様…今日はボクに、いっぱい甘えてくれていいんだよ』
王子のように喋り、優しげな声で手を広げる
これで少しでも癒しになってくれれば…
…しかし、そんな意図に反し、ミソラさんは私の肩をつかみ
「王子はそんな事言わないわ」
真顔で返してくるのだった
「そんなサービスするキャラじゃないの、王子は」
キャラって言った?!
ミソラさんって『ファン心理』で動いているのかもなぁ…
『ひかやみ』もそうだけど、憧れたものについてく的な
「ま、まあ、本物じゃないからこそ
遠慮なくできる事ってのもあるじゃないですか」
「…確かに、一理あるわね
誰かの二次創作を見て、新たな魅力を発見したりもするものね」
…なんか沼にはまった人の発言っぽいなー
「じゃあ、王子…私の…」
ミソラさんは、私の肩をつかみ、自分の顔を近づけてくる
「あ…」
息がかかるほどの距離
ミソラさんは目を細め、うっとりとしたような表情になる
彼女の胸が当たり、鼓動が聞こえてくる
静かで、ゆっくりとした時間が流れる
まるで時が止まったかのように
そして…
「抱き枕になって!」
「…うえ?!」
正直ちょっとドキドキしていた私は、予想外のお願いにびっくりするのだった
………
……
…
「『花』の実家では、妹を抱いて寝てたのよね」
寝巻きに着替える私たち
ミソラさんは『ひかやみ』のみーさんが着ている黒のネグリジェかな?
と思っていたが、案外普通のかわいいピンク寝巻だった
正直、こっちの方が合ってると思う
「こっちに越してきてからは、そんな事できる相手もなく…寂しい夜だったわ
冬場じゃないし、暑い筈なんだけど、人肌が恋しくなるっていうか…」
なんとなく、わかる気がする
今の私も、環境が変わり、故郷を離れたところで寝ている
たまにちょっと、不安になるのだ
「お、おかしい…?」
「そんな事ないですよ、かわいいなーって」
私も小さい頃は、お父さんやお母さんによく抱きついていたものだ
着替えも終わり二人一緒にベッドへ入る
「で、ではさっそく…」
ミソラさんが、ベッドの中でがばっと抱きついてきた
…こうしてみて気づいたのだけれど、私とミソラさんの身長は同じくらい
もし、私がカナタ王子と身長も似ているとなると…
王子ってもしかして結構身長低いのでは…?
「む、ラベンダーの香り…あの女の匂いがする…!」
「うん?」
「王子!証拠はそろったわ!あの女とスケベしたんでしょう?!」
「いきなり浮気追及ごっこを始めないで下さい?!」
ちょっとしおらしくなってかわいいな、と思ってたのに?!
「それ夕食時に抱き着いてきたメイドさんの匂いです!
ワタシノーギルティ!」
「慰謝料を請求するわ
『ひかやみ』の二十一巻で手を打ちましょう」
「お金で買えないやつじゃないですか?!」
出版社の発売リストにしか載ってない幻の二十一巻!
「もー…そんなはしゃいでると、寝れなくなりま…」
…すー……すー……
(早っ?!)
ミソラさんの寝息が聞こえる
よほど疲れていたんだろう、あっという間だった
彼女のふわふわの金髪を見つつ、いつかの星空を思い出す
…私も寝ようかな…彼女ほどじゃないけど、今日も疲れたし
ゆっくりと目を閉じ、夢の中へ
明日も王子様のお仕事だぁ……
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