第12話 守る王子少女

執務室に行く…のはいいんだけど

そこに向かうには、メイドさんたちのいる大広間を通過しないといけない

今の私にとってはかなりの難所だ

…急ぎの用事ができたから!って言って、無理やり突っ切るか……


扉を開けて、私は部屋(安全地帯)から外へ出る


「あ、王子~、お出かけなん?」

またしても、接近してくるメイドさん

今回は一人がひっついて、残りの二人が脇を固めるフォーメーションのようだ

ひっつく担当のメイドさんは、三人の中で一番大きな胸を押し当ててくる

さっきの会話から察するに、多分この子がホシヅキさん


『ちょっと急に執務室まで呼ばれてね、行ってくるよ』

「そうなんや~」

そう言いつつ、何でキスしてしまいそうになるほど顔を近づけてくるのかな?!

恥ずかしくなった私は、目線を外し天井の方に顔を向け……


…ブチッ


「?!」

天井から、黄色くて大きな何かが落ちてくる?!


「離れて!」

慌てて二人を突き飛ばし、自分にひっついていた一人に覆いかぶさる

咄嗟の判断だった


ゴシャアアアアアアアアッ!!


複数のガラスが割れるような音

この音は…上に飾ってあったシャンデリア?!

何でそんなものが落ちて…


「くっ…!」

ガラスの破片が飛び散り、私に突き刺さる

い、いたい…!

けど、直接シャンデリアが当たってないから、かなりマシなはず…


「え、うそ…王子?!」

「そんな…何で…?」

突き飛ばした方のメイドさんたちは無事だったらしい

信じられない、といった声が聞こえる

腕の中のメイドさんも、カタカタ震えているだけで、怪我とかはなさそうだった


「何があった?!」

初老の男性の声

執事さんが大きな音を聞いて駆け付けたようだった


「パパ…その……急にシャンデリアが落ちてきて…!」

「王子が…ホシヅキをかばって…」

混乱と不安の声がする


『だ、大丈夫…心配しなくていいから……』

彼女らを安心させようと、顔を上げてゆっくり起き上がろうとするが


『ぐっ…?!』

強烈な激痛が走る

…め、めちゃめちゃ痛いっ…!


「王子…しっかりして…!王子……!」

私を…王子を呼ぶ声がだんだんと遠くなっていく感覚

だ、だめだ…意識が……



………

……



「ここは…?」

「王子…よかった……目、覚ましたぁ」

一度意識が途切れ、そして意識が戻った時

ミソラさんの心配そうな顔と、ホシヅキさんの泣きそうな顔が、間近にあった


「ここは医務室よ

 あなた、落ちてきたシャンデリアから、この子をかばって倒れたのよ」

「うう、ぐすっ……」

ミソラさんが、ホシヅキさんの頭を撫でてそう伝える


「シャンデリアが落ちるように細工がしてあったわ

 …たぶん『雪』の領主の仕業ね…帰り際にこんな嫌がらせをしてたなんて…」

自分の身の回りを確認する

ミソラさんが医務室と言っていた、薬草の匂いがする白い部屋

私は簡素なベッドに寝ていて、執事さんとメイドさん三人、そしてミソラさんが

椅子に座りながら私を見守っている


「…あれ?」

なんかスースーするな…と思って目線を自分の身体に向けると

上半身が脱がされて、包帯があちこちに巻かれている

…下着見られた?!

い、いやまあ、この場にいるのおじいちゃんと女の子だし、いいか…

いいって事にしとこう、うん……

…それよりも、問題は


「破片が刺さってないか確認のために、王子を脱がしました

 怪我は、思ったよりも大したことはありませんでしたが……」

執事さんは、私の胸元に目線を向ける


「これは重大事案だと思い、専門の治療班の前に、ミソラ殿をお呼びしました」

…とりあえず、冷静に判断できる執事さんでよかったと思う


「ミソラ殿、これは…」

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