第4話 認定!王子少女
「い、いや、その、あのそんな事言われましても
いきなりは受け止められないっていうか…」
女の子同士は大丈夫なのかってのもあるし
役割分担するなら、私、王子様じゃなくてお姫様の方がいいし…
パニックになった私は、真っ赤になっておろおろとするだけだった
「いや、その言い方は誤解を招くだろ…」
「ま、まずかったですかね…?」
誤解…?
「え?て、てっきりプロポーズかと…」
「ち、ちがうわよ!そういう意味じゃなくて…」
「よく考えたらわかるだろ?」
うぐっ…
に、人間だもの、たまに間違ったりもするでしょー?!
かわいい子に告白されたりしたら、認知も歪むってもんですよ、うん
「つ、つまり…?」
「カナタ王子のフリをして、戦争を止めるのに協力して欲しいの!」
「うえええええええええ?!」
い、一般村娘に何を言ってるの?!
「この状況を、血を流さすに解決できるのは、彼しかいない…!
でも彼は見つからない…」
「ええええ…貴族さんたちを騙すんですか…?」
「もう時間がないの…!後でどんなお叱りでも受けるわ!
戦争になってしまったらここも危ない…」
必死に説得してくる彼女の表情から、焦りが伝わってくる
今はそれくらいマズイ状況なんだと
「で、でもそんなこと言われても、自信ないですよ…」
いくら容姿が似ていても、王子様の真似とか、できる訳が
「…いや、行ったほうがいい」
「お父さん?!」
「襲ってきたやつらは、一旦引き上げたんだろう?
次はもっと大勢でやってくるかもしれないし、誰かを人質に…なんてこともありうる」
うあああああ…
確かにその心配は、自分でもしたけど
「で、でも私、本当の王子じゃないんだし…」
「そうであっても、王子との何かしらの関係を疑われて『始末しておけ』となるかもしれない」
「あ、あああああああ…」
お父さんは遠慮なしにズバズバ言ってくるので、ちょっと苦手なところもある
もうちょっと、柔らかく伝えていただけるとありがたいのですが…
「王子のフリは無理だとしても、ここは離れた方がいい
…村の連中には俺から言い含めておく
王子やセッカ、ミソラの事を聞かれても『知らない、見てない』と答えるように」
「……」
「だから、できるだけ早く出発したほうが…」
「…えっと……」
急な話の流れに、ついていくのがやっとの私
理屈はわかる…わかるんだけど…
自分を納得させるために、無理やり言葉をひねりだす
「ミソラさん…王族の人ってケーキ食べれるんですよね?!ケーキ!」
「え?」
「あ、いやうん、食べれるけど…」
「王族の人たちが食べるケーキって、すんごい美味しいんだよね?」
「お前っ…また食い意地張って…!
ダイエットするって言ってたのはどうした?!」
「い、いいでしょー?!きんきゅーじたいなんだし、それくらいご褒美があっても!」
「……そう、だな…」
新しい糖分が私を待っている!
…待っているからしょうがない…よね?!
「すまん…本当は親として、俺が守ってやるべきなんだが…そっちにいた方がきっと安全だ」
「謝ることなんてないよ!お父さん、ちゃんと私のこと考えてくれた上での結論だもん!」
お父さんにぎゅうっと抱きしめられる
小さい頃はよく私から抱っこされに行ってたけど、いつの間にか恥ずかしくなってやめてたな…
これが最後かもしれないな…と、そんな事を思う
「こんな形で送り出すことになるとは思わなかったが…
娘をよろしく頼む」
「…巻き込んでしまって…ごめんなさい」
「いや、王子とあんなに瓜二つなら、いずれ何らかの事件が起きてただろう
それが早まっただけだ」
私とお父さんは、荷物をまとめるために家の中に入る
とりあえず、お城に行くまでに必要なものだけをまとめるとして…
………
……
…
それから、小一時間ほど経つ
お父さんの手伝いもあり、私はリュックに必要な最低限の荷物を詰め終えた
「おじさま…すべてが終わったら、必ずセッカちゃんを連れて戻ってきます
それまで、どうかご自愛を」
こくこくとうなづくお父さん
「…じゃあお父さん、行ってきます
村のみんなのこと、お願いね」
「ああ…セッカも気をつけてな」
小説とかだと、なんかカッコいい別れの台詞を言ったりするけど
私たちだと、月並みな事しか言えないな…
なんて思いながら、私はミソラさんと一緒に、住み慣れた村を後にする
………
……
…
「あああああ、なんで私、了解なんてしちゃったんだろう…」
「は、早い!後悔するの早いわセッカちゃん!?」
村から出て数km離れた時点で、早速不安が襲ってくる私
「王子様のフリなんて無理ですよー!絶対ボロが出るに決まってますー!」
「そ、それはあたしが全力サポートするから…!」
泣き言を言いながら、私たちは乗合馬車の止まる場所まで、歩いていくのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます