第2話 王子少女は誤解を解きたい!

何か勘違いをして、怖い人たちはいなくなったので

私の後ろに隠れていた少女の方に向き直り、彼女の顔や姿をじっくり確認する事にした


さらさらの長い金髪、子供っぽさが残る整った顔立ち、エメラルドグリーンの瞳

かなりいいところのお嬢様のようであるが…

彼女はなぜか、腕に包帯を巻き、ところどころに穴の開いた黒い水着のような服を着ている

その穴から彼女のお肌が見えていて、とても…えっちだ

激しい運動をしたら、身体のいけない部分が見えてしまうんじゃないかと心配になる

まあ、さっき全力ダッシュしても平気だったんだし、たぶん大丈夫なんだろうけど…

…なんでこんなスケベな衣装を着てるのか…

貴族さんはよくわからないなぁ


「ごめんね、王子

 姿を消していたのは何か考えがあったんだろうけど…

 あたしのせいで正体をばらす事になっちゃって…」

そして彼女も勘違いをしたまま

…とりあえず誤解を解かないと、このままお城に連れてかれそうな感じである


「い、いやあの、そういう訳ではなくてですね…」

どう言ったらいいんだろうか…?


「ワタシ、オウジ、チガウ…OK?」

「…何言ってるの?」

そうだよね通じないよね!なんでカタコトになってるの私?!


「私は王子じゃないんです」

「ほぇ?」

そこ!首をかしげないで!


「でも、魔法使ってたわよ?」

「えっと、あそこの穴は、イノシシ除けに作った落とし穴で

 ちょっと勝手にあの人たちが落ちただけで魔法じゃないんです?わかります?」

「そんな機転を効かせられるとは、さすが王子だわ!」

「……」

これは骨が折れそうだ、と思った私は実力行使に出ることにした


「ああもう!しょうがない…!」

「ふぇ?」

私は服を脱ぎ……下着と、自分の胸のふくらみを見せた


「え…ええええええええ?!」

「おわかりいただけましたか?」

ううう、これが手っ取り早いとはいえ、私はなんでこんな痴女みたいな真似を…

目の前の子も相当アレな格好してるけど!


「わ、わかったわ……」

わかっていただけましたか


「あ、でもひょっとしたら偽乳かもしれないし、ちょっと触らせて…」

「ちょ、ちょっと…?!何ですかそのよだれ…?!や、やめてくださ…!」


…なぜか興奮した彼女に、胸を揉まれること十数秒


「ふう…堪能した……間違いなく王子じゃないわね」

「もー!堪能しないでくださいー!」

「実は王子じゃなくて王女だっただなんて…!あたしにだけは教えてほしかったわ」

「ちーがーいーまーすー!そういう事でもないですー!」

わざとやってないかなこの子?!

ううん、あと、自分が村人Aだと証明する方法は…


…あ、そうか


「ちょっとこっち来てくださいっ」

「あっ…」

彼女の手を引き、我が村の中へ

村のみんなに証明してもらえばいいんだ




我らヒルガオ村は、国の南西に位置しており、住民は三桁に届かないぐらい

特産品は芋

ほとんどが農家で、雑貨屋と酒場は一件づつ

あまり争いごともなく、日々のんびりと暮らしている

…争うような向上心のある子は、都会に行ってるだけとも言う


そんな村にやってくる客人が、注目されないはずがない


「あら、セッカちゃん。畑の方が騒がしかったけど、何かあったの?またイノシシ?」

「セッカー!となりのスケベなねーちゃん誰だ?おでに紹介しろ!」

「おや?セッカ…隣の子誰だ?いや、なんか見たことあるような気がするんだが…」

村のみんなは、変わった格好の人がやってきたのを見るやいなや、好奇の瞳で話しかけてくる

…ちょっとスケベな子も混じってるな…


「ほらぁ!私、王子様じゃなくてここの村娘なんですって!」

ホラー小説のように、村のみんなも全員、私を王子様だと思ってたらどうしよう

…なんて考えたけど、流石にそんな事はなかった


「そ、そう……なのね…」

周りの人間に『セッカ』と呼ばれる私を見て、流石に気づいたようだ


「王子じゃ、ないのね……」

彼女は、顔を両手で抑え…大粒の涙をぼろぼろとこぼしはじめる


「ごめんなさい、あたしてっきり行方不明の王子だと…」

その震える声を聞いて…そこで気づいた


彼女が必死で探していた王子

もしかしたら、もう生きていないかもしれない

そんな不安の中、彼が見つかったとなれば、喜びもひとしおだっただろう

…その人が、ただのそっくりさんだなんて

信じられないし信じたくなかったのかもしれない


「あ、え、えと…」

「あー!セッカが泣かしたー!」

訂正しないわけにはいかなかったけれど、そこまで考えていたら

もうちょっと上手く対応できたかも…

泣き始めた彼女になんて言っていいかわからない

…困った私は、奥の手を出すことにした


「と、とりあえず家に来て!」

私の経験上、落ち込んだ時は、あったかいお茶と甘いお菓子に限る

糖分はすべてを救う!…たぶん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る