アルゼンチン人は夜行性
アルゼンチンに滞在した6週間で私の生活スタイルは大きく変わった。ここに住む人たちの生活スタイルに合わせていたからだ。
タイトルにある様に、私が受けた印象としてはアルゼンチン人は夜型の傾向がある。そして日本の生活スタイルとは大きく異なる。
一番の要因は食事の時間だ。日本に住んでいた頃、私の生活スタイルは朝7時に起床、朝食を食べ、12時に昼食、15時におやつ、18~19時に夕食、23時頃に就寝。いたって普通の(日本では)生活スタイルだった。
しかし、アルゼンチンではみんな自由な時間に起きる。(仕事がなければ)まず昼12時までの間に起床、そして朝食。15時に昼食、17~18時にティータイム(お茶、コーヒー、おやつ)、21時に夕食、深夜2時頃に就寝。
食事の時間が大幅に日本とずれている。日本人がおやつを食べる時間に昼食を摂り、夕食を食べる時間はおやつタイムとなる。ダイエット方法として知られている「22時以降は食べません」などという生活スタイルはここでは通用しない。美容方法として知られている「22時~2時まではお肌のゴールデンタイムなのでしっかり寝る」という方法も通用しない。
初めは私も自分の生活スタイルを維持したままアルゼンチンに滞在しようとした。しかし、週に何度も夫の親族や友人に夕食に招待してもらったために、自然とアルゼンチンの生活スタイルに合わせる形となった。
というのも、招待された夕食の時間は21時だからだ。そして大体深夜0~1時くらいまで食事会は続く。レストランもそれに合わせて遅くまで営業しているところも多く、夜23時で満席、外で待っている人の列ができているレストランも何件か見かけた。
また親族や友人宅に招待されることも多いが、それでも時間は変わらない。そして中にはその夕食会に小学生の子供が参加していることもある。深夜1時でもまだテレビゲームを楽しんでいる子供を見て、「寝ないの?」と親に聞くと、「週末(学校のない日)は大体朝3時頃に寝るよ」と言っていた。日本の親なら発狂するだろう。
と、生粋の日本人である私は常に驚くばかりだったが、ここではこれが普通なのだ。もちろん学校や仕事は朝9時頃に始まり5時に終わる日本と変わらないスタイルだが、食事や就寝時間は基本的に夜行性。
また面白い話を聞いた。アルゼンチンでは女性が15歳になるとキンセアーニョスと呼ばれる伝統的なお祝いを行う。もともと15歳で成人して世に出ていく、という意味合いから始まったこの行事は、現在では15歳の誕生日に結婚式のような規模の盛大なお祝いをするスタイルになっている。
夫は二人の姉がいて、どちらも15歳の時にこのお祝いをした。その時取った写真や映像があったため見せてもらったが、本当に結婚式と見間違えるほど盛大なお祝いだった。会場は恐らくホテルのパーティールームのようなところを貸し切り、招待客はざっと見ただけで100人くらいはいると思われる。客は親族や友人で、皆テーブル席について主役の登場を待っている。そして綺麗なドレスに身を包んだ15歳の主役は、父親と共に登場。会場は一気に盛り上がる。
その後は主役がスピーチをし、マイクを持って一人ひとりにインタビューをして回っていた。(スペイン語だったため内容は不明。とにかく招待客全員に何かを聞いて回っていた)その後は写真撮影をし、ダンスの時間。広いパーティールームでクラブのようにダンスを楽しむ。
私は盛大なお祝いを微笑ましく見ていた。楽しそう、すごい、みんな綺麗。そんな感じで眺めていると、夫がそっと私に耳打ちする。
「ちなみにこのパーティー、朝5時まで続いたからね」
はい? 朝5時? いや、なんで? どういうこと?
二次会、三次会を朝5時までやっていたわけではない。日本の結婚式で例えるなら、結婚式そのものが朝5時まで続いていたのだ。聞くと、パーティーが始まる時間は夕食の時間21時。盛大なお祝いなので短時間では終わるわけはなく、朝まで楽しむのだそう。
さらにこれに参加していた夫は当時齢2歳。え、2歳? 2歳の子が朝5時まで起きてんの?
「俺の夜型生活スタイルはここから始まった」
長い物語の冒頭のような語り口で夫は言う。夫は完全夜型タイプで朝4~5時に就寝し、昼12~13時頃に起床する。どんな生活スタイル? と思っていたがアルゼンチンに来て納得した。ここで暮らしてたらそうなるわ。(たった6週間で私も似たような生活スタイルになった)
カナダに帰国後は生活スタイルをカナダのものに戻しているが、アルゼンチンの生活スタイルを知って良かったことがある。私は不眠症の傾向があり、頻繁に眠れなくなる。日本の生活スタイルしか知らなかった時は、眠れないことがつらかった。
眠らなきゃ。
この時間(深夜2時頃)になってもまだ眠れない……どうしよ。
また朝まで眠れなかった……
眠れない私に何か問題があるのかな……
こんな感じで眠れないことがストレスとなり、その原因を考え、そしてさらに眠れなくなり、自己嫌悪、という悪循環に陥ることがよくある。
しかし、アルゼンチンでは2歳の子が朝5時まで起きている。そして朝眠る。昼に起きたって別にいいじゃない。学校とか仕事がなければ何時に起きたっていいのよ。そんな日があったっていいじゃん。
そんな考えに私は少し救われた。それからは多少眠れない日があっても、「じゃあその時間は映画見たり、本読んだりして過ごせばいいじゃん。眠くなったら寝ればいい」とそう思えるようになった。
今でもたまに眠れないことはあるが、深く考えずにそのまま起き続けていると次の夜には眠れるようになった。不眠をそこまで気にしなくなったのは私の中で大きな変化をもたらした。
滞在中に様々なカルチャーショックを受けたが、得られたものは大きい。国際的な文化交流のいいところは、一つの文化に囚われなくて済むことだ。木登りを強いられた魚に、海や川の存在を教えてくれるのが文化交流だ。
拙い文章ながら、こういった文化の違いを皆さんに伝えて、面白い、役に立ったと少しでも思えてもらえれば幸いである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます