オリジナルはオリジナルではない?

 私と夫は日本のアニメが好きだ。複数の動画配信サービスに登録し、よく二人で見る。私達はそれぞれ違う母国語を話すが、二人の間の共通言語は英語の為英語の音声と字幕を付けて楽しんでいる。


 ある時私が「ナルトを全話観たい」と言い出したのをきっかけに、私達はナルトを全話観始めた。全話観たことある人ならわかると思うが、膨大な量である。ナルトは全200話、ナルト疾風伝は500話、計720話である。無謀だ。そして私はこれを知らなかったが為に「全話観よう」などど言ったのである。それを聞いた夫は「まあ、、、いいけど」と少々呆れたような、まあ観たいなら付き合うよ、どうなっても知らないけど、という表情を私に向けたのである。そしてネットで全何話あるのか検索し、驚愕した。無理だ、と呟いた。夫は「でしょ?」という顔をする。


 そして私達はどうしたかというと、原作の漫画に沿ったエピソードだけを見ることにしたのである。アニメを制作された方々には申し訳ないが、720話を全て観る程の時間と体力を私達は持ち合わせていなかったのでご容赦いただきたい。


 そして私は日本語で「アニメ ナルト オリジナル」とグーグルで検索した。そしてどれが原作に沿ったもので、どれがアニメオリジナルストーリーなのかを夫に伝えたのである。この時の会話はこんな感じだった。


私「ナルトの136話~220話まではオリジナルだよ」

夫「わかった。じゃあ136話から見ないといけないね」

私「え、なんで?アニメオリジナルだから見なくていいんだよ。飛ばそう」

夫「え、だからこそ観なきゃだめでしょ?」

私「違うよ。これはアニメオリジナルだよ?」

夫「そうだよ。だから観なきゃ」

私「え、漫画と違うストーリー観たいの?」

夫「観ないよ。さっき二人でそう話したじゃん」

私「だったらこれはアニメオリジナルだから飛ばそうよ」

夫「だから観なきゃいけないじゃん」

私「?」

夫「?」


 会話が成り立っていない。なぜこのようになったかというと、私達の中で「オリジナル」という言葉の意味を違って認識していたのだ。というより、英語の「Original」の意味を私が勘違いしていたのだ。


 日本では「オリジナル」という言葉は「元になっているものから派生して作られた新しいもの」という意味として使われる。その為「アニメオリジナルストーリー」というのは、原作にはない、アニメ制作会社が独自で作り出したストーリーとなる。

 英語の「Original」はこれとは真逆で、純粋に「元になっているもの」を差す。「元祖」と言ってもいい。この場合は原作漫画が英語でいう「Original」となる。


 つまり、私は「オリジナル」だから観なくてもいいと主張し、夫は「Original」だから観なければと主張していた。お互い反対の意味で同じ言葉を使っているのだから、そりゃ会話は成り立たない。漸く誤解が解けたときには、私は一つ英語を学び、夫は一つ日本語を学んだ。


 英語教師である夫曰く、「Original」には「オリジナル」の意味もあるらしい。要するに使い方によっては日本人が使っている「オリジナル」と同じ意味と要領で使えるそうだ。しかし、上記の会話の場合は「Original」は純粋に「元祖」「元になっているもの」という意味になるらしい。

 日本でも英語は使われているから大丈夫と思っていたが、日本で独自に発展し本来の英語から独立したものも多くある。英語圏で使用する場合は注意が必要だ。


 そしてナルトの視聴はどうだったかというと、無事3か月程をかけて観終わった。面白かった。感動した。ただ、ここで私は重大な勘違いをしていたことに気付く。これはまた次のエピソードでお話ししたいと思う。

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