第2話後宮入り
貴妃、淑妃のお輿入れから1年がたった。
期待もあったが、結果はすぐに出ないものだ。
「仕方ない。年若いものを入れよう」
炎は合理的な性格で主上を慕っていた。
☆☆☆
私が帝の妃になるなんて夢のようだわ。
しっかりしないと。
言われない噂や嘘で幽閉されないためにも。
帝は理知的で、民を守るために改革を沢山実施していると評判だ。
そんな帝の子を設ける機会をいただけるなんて。
人生どんなことをしたらこんな幸運に巡り合えるのだろうか。
私は美貌はない。
貴妃と淑妃の美しさは絵画に出てきそうなくらいだ。
(私は彼女たちのできない部分の穴埋めに過ぎない)
美貌で勝とうとか、教養で勝とうとか思わない。
だって、彼女たちにはきっとかなわない。
費やしてきた時間が限りなく違うのだ。
美貌と教養はひとりでは決して得ることはできない。
教養は実家の援助があってこそ集中できる。
私は何の後ろ盾もない。
ただ、幾台か前の帝の血をひいているから抜擢されたに過ぎない。
親が早くに他界しているから、親戚の証言だ。
徹底的に調べた限りではいとこよりはとこより遠い関係性らしい。
それはほとんど赤の他人だ。
それでも、自分には高貴な血が少しは流れている
だから、自分に課せられた役目を果たさなければ。
☆☆☆
何度か婦人会という名の情報収集で二人とも似たようなことを
言っているのに気づく。
「うちは有所ある家柄でして」
「祖父の持っている場所があそこでありまして」
「あら、わたくしもそこに行ったことがありますのよ」
(有所ある家柄で、場所がすぐ近く。
それって親戚ってことなのでは?
どこかで血縁がつながっているか、商売先とかかしら)
「うらやましいですわ。そんな高貴な場には縁がなくて」
「でしょうね」
「ずっと後宮の下働きでしたから」
「あなた、漢詩を諳んじられて?」
「いえ。書くこともままなりません」
「まぁかわいそうね。琴や二胡くらいはひけるのでしょう?」
「いえ」
「まぁまぁ。では何で主上をもてなしておいでなの?」
「お二人のようには主上のお疲れをいやすことなんてできません。
私にできるのは画を描くくらいで」
「画?」
「描かれるの?」
「はい。主上はそれを見て喜んでくれます」
「そうですか」
彼女たちの興味をひくことはなかったようだ。
2人で衣装のことや舞や雅楽の知識を付けている。
とても女性的で、趣のあることだろう。
李貴妃が得意なものは雅楽、舞踏、二胡など雅なもの全般が得意のようだ。
淑妃は漢詩をよめて、政治の話に詳しい。
こちらも琴の奏者としての腕前はかなりのものだ。香も得意なのだとか。
それらに比べて、私は画だけ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます