第2話後宮入り

 

 貴妃、淑妃のお輿入れから1年がたった。

 期待もあったが、結果はすぐに出ないものだ。

「仕方ない。年若いものを入れよう」


 江炎コウ エン徳妃15歳。二人に比べればかなり若い。

 炎は合理的な性格で主上を慕っていた。


 ☆☆☆


 私が帝の妃になるなんて夢のようだわ。

 しっかりしないと。

 言われない噂や嘘で幽閉されないためにも。


 帝は理知的で、民を守るために改革を沢山実施していると評判だ。

 そんな帝の子を設ける機会をいただけるなんて。

 人生どんなことをしたらこんな幸運に巡り合えるのだろうか。


 私は美貌はない。

 貴妃と淑妃の美しさは絵画に出てきそうなくらいだ。

(私は彼女たちのできない部分の穴埋めに過ぎない)


 美貌で勝とうとか、教養で勝とうとか思わない。

 だって、彼女たちにはきっとかなわない。


 費やしてきた時間が限りなく違うのだ。

 美貌と教養はひとりでは決して得ることはできない。

 教養は実家の援助があってこそ集中できる。


 私は何の後ろ盾もない。


 ただ、幾台か前の帝の血をひいているから抜擢されたに過ぎない。

 親が早くに他界しているから、親戚の証言だ。

 徹底的に調べた限りではいとこよりはとこより遠い関係性らしい。


 それはほとんど赤の他人だ。

 それでも、自分には高貴な血が少しは流れている

 だから、自分に課せられた役目を果たさなければ。


 

 ☆☆☆

 

 何度か婦人会という名の情報収集で二人とも似たようなことを

 言っているのに気づく。

「うちは有所ある家柄でして」

「祖父の持っている場所があそこでありまして」

「あら、わたくしもそこに行ったことがありますのよ」


(有所ある家柄で、場所がすぐ近く。

 それって親戚ってことなのでは?

 どこかで血縁がつながっているか、商売先とかかしら)


「うらやましいですわ。そんな高貴な場には縁がなくて」

「でしょうね」

「ずっと後宮の下働きでしたから」

「あなた、漢詩を諳んじられて?」

「いえ。書くこともままなりません」

「まぁかわいそうね。琴や二胡くらいはひけるのでしょう?」

「いえ」

「まぁまぁ。では何で主上をもてなしておいでなの?」

「お二人のようには主上のお疲れをいやすことなんてできません。

 私にできるのは画を描くくらいで」


「画?」

「描かれるの?」

「はい。主上はそれを見て喜んでくれます」

「そうですか」

 彼女たちの興味をひくことはなかったようだ。


 2人で衣装のことや舞や雅楽の知識を付けている。

 とても女性的で、趣のあることだろう。

 李貴妃が得意なものは雅楽、舞踏、二胡など雅なもの全般が得意のようだ。


 淑妃は漢詩をよめて、政治の話に詳しい。

 こちらも琴の奏者としての腕前はかなりのものだ。香も得意なのだとか。

 それらに比べて、私は画だけ。


 

 

 

 




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