第144話 魔女、地下へ降りる
「入っただけだと何も起きないようだね」
「そのようだな」
部屋に踏み込めば何かが起きると考えていたけど何もおきないようだ。
「どこかに操作するためのものかスイッチなんかがあるのかな?」
「だろうな、とりあえず探してみるか」
アダルと二人で手分けをして部屋の中を調べる。部屋の中は非常灯の光しか無く暗いので、魔法で灯りを灯すことにする。
「ん? これは」
「何かあったか?」
「今魔法で灯りを出そうとしたのだけど、少しだけマナの動きが不自然な場所があってね」
魔法で灯りを出してその場所へ移動する。
「これかな」
「どうやらそのようだな……。で、どうする? 一度戻るって手もあるが」
「外にいるラルダにこの事を教えてから動かそうか。仮に出直しても状況が好転することはないだろうからね」
「それもそうだな」
部屋の中を覗き込んでいるラルダの元まで戻り一度部屋から出る。
「あのアダルのいる場所に仕掛けがあるようだからダダンに伝えておいて、あと何が起こるかわからないからラルダはもう少し下がってるほうが良いかな」
「このまま動かすので?」
「そのつもり、後のことは任せるわ」
「わかりました。この事も含めて報告しておきます」
ラルダが扉の前から距離を取るのを確認してからアダルの元へ戻る。アダルの足元にはつなぎ目のないはずの床に、その一箇所だけ四角の切れ目が薄っすらと見えている。ここを踏めば何かが起きると思われる。見ただけでは罠の可能性もあるけど、他に何も無いのでここを踏まない選択肢はない。
「準備はいいか?」
「結界は張ったから何があっても大丈夫だよ」
「おう、それじゃあ行くぞ」
アダルがそっと切れ目のある部分を踏み込んだ。特に何らかの音が鳴ることもなくそっと入口の扉が閉まる。それと同時に室内が明るくなり部屋自体が動いているのかかすかに足元が振動している。
「この感じだと地下に移動しているのかな」
「どうやらそのようだな」
アダルは踏んでいた床から足を離しているが、部屋の移動は止まらないようだ。この部屋自体がエレベーターになっているようで、目的地にたどり着くまでは待つしか無いようだ。部屋の中は明るくなったがそれ以外の変化はない。
しばらくする部屋の振動が止まり扉が開いた。どうやら地下は動力が生きているようで扉の先に見える通路は明るい。部屋の中から通路の奥を見てみると通路の奥に扉が一つあるのが見えた。
「とりあえずあそこまで行きましょうか」
アダルとともに通路を進み扉の前まで到着する。すると扉がひとりでに開く、どうやら自動ドアに機能も行きているようである。古代遺跡でここまで機能が生きているというのは珍しい。
「部屋の中は……、あれは転移装置だな」
「そのようだね。つまりは未帰還者はここに迷い込んだ所であの転移装置に乗ってしまったってことかな。初めて見る人にはあれガ転移装置だとわからないからね」
動力が生きているということは転移装置も稼働しているということになる。そんな所に不用意に乗ってしま移転にしてしまったのだろう。ただ戻ってこれていないという事は転移先に問題があるのだろう。
「どうする? 未帰還者は転移の罠にハマって戻ってこれないという報告をするだけでも良いと思うけど」
「冗談だろ? こんなの見てこの先に何があるのか見ないで戻るなんてありえないだろ」
「まあ、そうだよね」
念の為部屋の中に転移先の情報がないか探してみたがそれらしいものは無い。
「転移したは良いけどカベノナカニイルってのは勘弁してほしいな」
「流石にそれはないだろう。この装置を作った奴らが転移先に危険がある状態で使うとは思えないからな。転移先に危険があれば転移装置が動かないと思うが」
確かにそうかも知れない。転移先の情報を確認する手段があればそうとも言えないけど、軽く調べた所それっぽいものはない。転移先が埋まっているとか水の中なら流石にセーフティーのようなものがかかると思う、多分。
「まあここまで来たら行くっきゃ無いよね。結界は張っておくからなんとでもなるでしょ」
「おう助かる。それじゃあ行くか」
私とアダルは同時に転移装置の上に乗る。前に乗った時と同じ感覚が私の体を包むと同時に視界が真っ暗になった。どうやら転移先には明かりが無いようだ。早速魔法で明ると生み出すことであたりを照らす。
「どうやらこっちはボロボロのようだね」
「そのようだな、この転移装置も動いていないようだ。これじゃあ戻ることは出来ないな」
転移装置から下りて改めて転移装置を見てみる。特に壊れているというといった感じではなく、動かすためのエネルギーが不足しているのだろう。そもそもこの部屋が真っ暗な時点で動力が稼働していないのはわかる。
「まあ魔力を直接送れば動かすことは出来ると思うけど」
「そうなのか?」
「たぶんね。今試しても仕方がないし、とりあえず外を目指しましょうか。ここがどこかわかるかもしれないし未帰還者の消息もわかるかもしれないし」
「それもそうだな」
魔法の明かりで照らされている部屋の中には特に見るべきものもないので、開いたままの入口へ向かう。魔法の灯りを何個か生み出して通路に等間隔に配置していく。非常灯すらついていない事からあちらとは違い完全に動力が切れているという事だろう。
あちらと同じ構造ならエレベーターがあるはずなのだけど、未帰還者たちの死体が見あたらないことからどうにかしてエレベーターを動かしたのだろうか? 通路を進み開きっぱなしの扉から灯りを部屋の中へ移動させてから中を覗く。
「どうやらこっちは階段で上り下りするようだね」
扉の先には簡単な石造りの階段があるのが見えた。ただしこの階段は古代遺跡の時代に作られたものではなく誰かが作ったものだと思われる。ところどころに劣化が見られるが問題なく使えそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます