第140話 魔女、飛竜の味を語る
問、ワイバーンの肉は美味しいかどうか。
答、不味いです。
「竜種の肉はうまいのかと思っていたが不味いのか」
「龍ならまあ美味しいんだけどね」
「お前は龍を食った事があるのか」
「今のところ尻尾だけ食べたことがあるよ」
竜ではなく龍を食べたことがあると聞いたガーリーがドン引きしている。言わずと知れた火龍の尻尾のことだ。最初に食べたのは何の肉か知らないで師匠が持ってきたものだった。それからは数十年に一度食べていたけど、後々それが火龍の尻尾だと聞かされたときは私もドン引きしたものだ。
火龍って神の眷属なわけでそれの尻尾を食べてたとは思いもよらなかった。ただ味は美味しかったです。尻尾の先端部分は鱗も固くなく、肉も意外と脂が乗っていて美味しかった。
いやまあ今はそれに関してはどうでもいい、問題は眼の前に高く積み上げられている飛竜の死体の山だ。収納に入れて持って変えれば良いのだけど、正直被膜以外はいらない。
飛竜に関しては思いの外すぐに見つかった。記録に残っていなかったのはただ単に縄張りのいちが変わっていたからのようだ。空の上からだとわかりやすいが地上からだとまず見つけられなかっただろう。
場所は大山脈のヒューボルト側ではなく、反対側のそれも地上からは行くのが難しい窪地に巣を作っていたようだ。その窪地は動物が豊富なようであえてその窪地の外へ出て獲物を探す必要がないようだ。そのために目撃情報が上がらなくなったようだ。
そんな飛竜だけど空を飛んでいる私を見つけて獲物だと思ったようで集団で襲ってきた。結果は眼の前に積まれた飛竜で出来た死体の山なんですけどね。とりあえず被膜部分を解体して収納ポシェットへ入れておく。問題はこの死体の山をどうするかになる。一応皮は使えると思う、そして肝心の肉なのだけどこれが美味しくない。
筋肉質で硬い上に普通に味がエグいのだ。毒はないのだが本当に不味い。実のところ龍種と違い竜種の肉は全部が美味しくない。飛竜だけではなく走竜も地竜も不味い、ただその不味さのおかげで、馬代わりとして馬車をひいたり騎乗したりされるようになり無闇矢鱈に狩られることがないのかも知れない。
ちなみに飛竜も騎乗が出来るようで、世間一般のドラゴンライダーというのは飛竜に乗る人のことを言う。ただ戦闘に使うというよりは偵察などで使われることが多いようだ。輸送に関しては人二人分程度なら乗せて飛べるようだけど、それ以上の重量が乗るとうまく飛べないらしい。
「これを持って返ってもあのギルドだと解体とか無理だよね」
「あの惨状だとそうなるだろうな」
「お肉が不味いから解体しても鱗と魔石くらいだし、解体する旨味がないよね」
「鱗だけでもいい値段になるのではないのか?」
「どうだろう? まあ収納に放り込んでおけばそのうち使い道はでてくるかな?」
とりあえず飛竜の山を収納に放り込む。襲ってきた飛竜は一部のようでここからでも飛竜が飛んでいるのが見える。ただその飛竜達は、同族の死体の山を目にしてこちらを襲って来る気はないように見える。
「目的は達したし戻るか」
「他に探す魔物はいないのか?」
「アイアンゴーレムの魔鉄がほしいけど、このあたりでの目撃情報がなさそうなんだよね」
「ではどうする?」
「アダルと合流して聞いてみるのが良いかな」
「確かにあいつなら知っていそうだな」
ゴーレムというのは採掘場などが掘り起こされ、マナを含んだ空気に鉱石に触れることで生まれる。つまり鉱山を探せばかなりの確率で見つけることが出来ると思う。ゴーレムが生まれた鉱山などは大体が廃坑になってしまう。理由は単純にゴーレムを倒すのが困難という理由だ。
仮に鉄が魔力を吸収して魔鉄となり、その魔鉄がゴーレムになったとする。その場合全身が魔鉄になるわけで倒すのが難しい。そしてゴーレムを一体見たら周りに三十体いると思えと言われるくらい一気に生まれることになる。
幸いにゴーレムは外にはでてこないので、遭遇しても逃げ出せば簡単に逃げることが出来る。ちなみにゴーレムの大きさや姿かたちは様々である。元となった鉱石の量で変わるので、小さいものだと私の腰くらいの大きさ程度だったり、逆に五メートルを超える巨体だったりする。
倒し方はひたすらその体を削っていくか、魔石を抜き出すか破壊すればいい。魔石はだいたい体の中央にあるので元となった鉱石以上に硬い武器で刺し貫けばいい。私の場合は魔術ですりつぶしてもいいし、魔石だけ貫いてもいいのでどうとでもなる。
「とりあえず帰ろっか」
「そうだな、ここにいても他にやることはないのだろう?」
ガーリーが私の肩に飛び乗る。
「それじゃあしっかり捕まっていてね」
杖に横座りをして空へ舞い上がる。飛竜が威嚇するように私たちの周りをかなりの距離を開けて飛んでいる。ただし一定の距離からは近づくことはなく攻撃をしてくるつもりはないようだ。窪地から大山脈の上空へたどり着いた所でヒューボルトの港町を目指して飛んでいく。
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