第117話 魔女、もふもふ化を見逃す
side ダイゴ
エリー殿が上空で暴れているのが見える。派手に攻撃をしているようだが相手に届いていないようだ。さすがに空の上だと援護も出来ぬし、わしが行ってどうにかなるものでもないだろう。ただ今は目の前の魔物共を倒すのみだ。
「者どもわしに続けーー」
声を張り上げ槍を薙ぎ、敵を吹き飛ばす。倒れた敵を後方から追ってくる同胞がとどめを刺す。
「ダイゴ様、前へ出すぎです」
そう声を掛けられて周りを見るとわしの組だけ突出してしまっているようだ。
「よし、周りが追いつくまでここで停止する、各々警戒しつつ休憩をするように」
そう言ってわしは腰から竹で出来た水筒を手にとり水をあおる。エリー殿との訓練のおかげか旅に出る前よりも強くなっている実感が初めて持てた。決して魔物が弱いわけではない、周りを見ているとそれはよく分かる。
わし自身エリー殿に負けまくりだったので強くなっている実感は無かったが魔物との戦いで初めてわしが強くなっているのがわかった。休憩を挟みつつ襲ってくる魔物を対処していると後続も周りも追いついてきたようだ。
「休憩は終わりだ、ゆくぞ」
再び魔物を倒しながら進んでいく、しばらくすると地響きとともに巨大な亀の魔物が現れた。わしの位置からは遠いが戦っている者たちでは対処できていないように見える。
「わしはあれを倒しに行く、この組の指揮はゴロウタに任せる」
「えっ俺ですか」
「それでは任せたぞ」
呼び止められるのを無視して魔物をなぎ倒しながら亀へと向かう、わしが十人いても囲い込めないほどのデカさだ。
「おうダイゴ来たか」
名前を呼ばれて振り向くとそこには知り合いが立っていた。
「トラジロウの親分、お久しぶりです」
「親分はよせやい、今ではおめーのほうが上役なんだからよ」
「そう言わないでくださいよ、そもそも昇格したくないと居座ってるのは親分のほうじゃないですか」
トラジロウの親分はこの獣人大陸でも一番魔物が出没する地域に居座っている人だ。それ以外にもやんちゃな新人を教育している方でもある。わしも武頼に入った時に世話になった。
「はっはっは、ダイゴちーっと手伝えや」
「わかりました、これをひっくり返すんですね」
「わかってるじゃねーか」
わしは持っていた槍を近くにいた者に預けてトラジロウの親分と共に亀へと近づく。
「「ぐるぁぁぁぁぁぁぁ」」
わしとトラジロウの旦那が咆哮を上げる。体中の血流が沸騰するように熱くなり流れが早くなるのが感じられる。わしとトラジロウ親分の姿が人のそれから獣の姿へと変わる。
獣化、わしら獣人の切り札というやつだ、見た目は二足歩行の獣と言ったところだろうか、わしはまさしく熊のそれに、トラジロウ親分は虎の姿に変わっている。獣化をすると人の姿のときよりも身体能力が数倍になる。
「よしいっちょやるか」
おわしとトラジロウ親分は亀の側面へと周り甲羅へ手を掛ける。
「「ふぬぅぅぅぅぅぅ、おうりゃあ」」
人の姿のままならひっくり返す事ができないほどの亀を、わしとトラジロウ親分の二人でひっくり返した。
「よーし、お前らこいつは任せた。ダイゴ次へ行くぞ」
「へい」
亀はまだまだたくさんいるが、わしとトラジロウ親分を見てか、他にも獣化をして戦っているものも出始めている。わしとトラジロウ親分は一度獣化を解いてその場に倒れ込む。獣化は疲れる全身汗だらけだ、預けていた槍を受け取り水を取り出し少し口に含んだ後に残りを頭からかける。空を見上げると上での戦いはまだ続いているようだった。
◆
のんびりしていると地上のほうがどうなるかわからない、未だに魔物が大山脈を超えてなだれ込んできている。簡単な魔術だとダメージを与えられない、魔纏は警戒されているようで避けられてしまう、残りは私が準備している魔法になる。
「お前の拳を受けるのは危険だな」
ガーリーがそう言うと、どこからともなく一振りの剣が出てきた。よくよく見るとガーリーの腕にはアダルが付けている腕輪とそっくりなものが付けられていた。その腕輪には私が貰った腕輪とは違い宝石が一つハメられているのが見える。きっとあの腕輪がアダルの探していたものかも知れないね。
「では今度はこちらから行かせてもらう」
ガーリーが剣を片手に持ち私に向かって駆けてくる、それを迎え撃つために魔纏を使いガーリーの攻撃に拳を合わせる。砕くつもりで叩きつけたのだけど刃こぼれ一つすることもなく、それどころか触れた瞬間に私の魔力が吸われた気がしてとっさに後ろへ飛び退いた。
「吸魔の効果がある?」
「よくわかったな、お前のその技は魔力を使うのだろう、ちょうどいいものを持っていたのでな」
吸魔の剣とか厄介だね、剣全体に効果があるようで殴っちゃうと魔力を吸われてしまう。どうしたものかな本体に攻撃を通せば吹っ飛ばせるけど吸魔の剣をくぐり抜けて、というのは結構な難易度だよね。仕方がない、まずはあの武器を破壊するところから始めましょうか。私は収納ポシェットから愛用の杖を取り出す。この杖で本気で殴ればなんとかなるでしょう。
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