第112話 魔女、ラーメンを食べる
アダルは船員たちに退職金代わりに結構なお金を渡して乗組員を下船させたようだった。船は渡した収納袋にちゃんと入れることが出来たようで、港からその姿はなくなっているようだった。その様子を見た人達の間で結構な騒ぎになったらしいけど私たちはその騒動に巻き込まれる前に都へと旅立つことになった。
船を収納した袋はやはりというか、アダルの持つ腕輪に収納出来なかったようで、今はアダルの腰から下げられている。一応はアダルの血を使って、使用者登録をしておいたので盗難されてもどうにかなるんじゃないかな。
それからアダルとギーラが戦に参加する理由を聞いてみたのだけど「面白そうだから」とはぐらかされた。流石に戦を面白そうという理由で参加する人はいないと思うんだけど……、どこからともなくお前がいうなとか聞こえた気がするけど、きっと気のせいだよね。流石の私も面白そうって理由で戦には参加しないよ。
まあ、今回のは戦とは言ってるけど、相手が魔物や人を辞めたと思えるモノたちだからね、アダルたちにもなにか思惑があるのでしょうね。それよりも今の私の興味はアダルから貰った腕輪だ。壊さないように調べないといけないのでちょっと私の手に余る感じだ。少しずつ調べてはいるけど魔道具系は専門外なので、本格的に調べるにはあの変態に相談しないと駄目だろうね。
そして都に戻ってきた私はキッカが用意してくれた小屋で錬金術に勤しんでいます。都からほど近い森の中に今では誰にも使われていない狩猟小屋があったようで、そこを清掃と改装したのを用意してくれました。
ちなみに寝泊まりは相変わらず宿を借りている。ご飯も同様で、昼以外は宿で頂いてる。だって自分で作るのは面倒だし、温泉っていいよね。ちなみにお昼は食べたり食べなかったり、錬金術の作業次第ってところになる。低級なのはぱぱっと大量生産できるのだけど、流石に上級になるとそうもいかない。
四肢欠損すら治すとなると、まあ作るのにもそれ相応の素材と時間がかかるのですよ。鍋をかき混ぜながら魔力を入れていくのだけど、初級は結構適当でいいのだけど、効果の高い物を作るにはかなりの微調整が必要になってくるんだよね。
出来上がった低級や中級のポーションは、キッカにお金と引き替えに渡している。戦に備えて作ったのだけど、薬で治せない魔力に関わる病気の治療で使っているようだ。どうやら獣人特有の病気があって今までそれの治療が出来なかったらしいのだけど、キリエ婆さんがダメ元で私に話を持ってきた所で、ポーションでの治療が可能なのがわかった。
その病気というのが、魔力が体内で固まってしまい体に不調をきたすようになるというものだった。戦闘などに携わる人は身体強化などで魔力を循環させる機会が多いのでかからないのだけど、普通の獣人の人達は魔力自体を使わないために、そのうち動かない魔力が固まってしまうというものだ。
同じような病気は獣人以外の種族にも出ることはあるけどそれはホント稀なんだよね。獣人にこの症状が出やすいのは、本来この世界に存在しなかった新しい種族というのも関係しているのではないかと思っている。
そんな理由で、もともとは回復用のポーションだけ作る予定だったけど、病気の治療用のポーションも作る事になって大忙しです。こうも忙しいと癒やし枠と助手としてニーナちゃんがほしい、ニーナちゃんとまでは言わなくても低級を作れるくらいの助手が欲しい。
今まで出会った獣人に適正のありそうな人はいないのかと思うかもしれないけど、どうやら獣人の人達って体外に魔力を出すのが苦手らしいんだよね。だから獣人大陸に錬金術師がいないのも理解できた。チワンくんなんかはその事を教えるとしょんぼりしていたね。
獣人の人でも、低級くらいまでなら無理やり魔力を流せば出来なくもないけど、微調整が出来ないらしいので種族的に向いていない。それでも百年くらい頑張ればどうにかなるかもしれないけど、そこまで生きられないのが現実だね。それこそ仙人となり不老を得ない限りは。
そんなわけで、戦が始まるギリギリまでできるだけのポーションを作りました。なるべく犠牲になる人が少なくなると良いよね。キッカの情報では、チラホラと敵さんが、こちらとあちらを遮断するようにそびえ立っている大山脈を超えてくるのが見えてきたのだとか。
こちらの戦力もどんどんと決戦場所に集結して、罠作りの得意な人達がせっせと罠を作って備えているようだ。あとは投石機なんかも組み上がりいつでも戦を始められるように準備は万端らしい。
私たちも明日には戦の起きる場所へ向かう。この戦にはカルラも参戦するとのことで、私たちも一緒に向かう予定だ。戦の前に英気を養うという事で、シュンが腕によりをかけて色々と作ってくれた。お酒を飲み食いを楽しみ、そしてなんと最後には締めとしてラーメンが出てきたんだよ、それも豚骨ラーメンだった。
久しぶりに食べたラーメンはすごく美味しかったです。とんこつラーメンはアダルとギーラには好評だったけど、ティッシモや獣人の皆様にはとんこつの臭いが駄目だったようで不評だった。代わりにティッシモたちには醤油ラーメンが出されていました。ただ獣人でもダイゴだけはとんこつラーメンが気にいったようで、おかわりしてましたけどね。
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ここで一度章を区切りとなります。
いつもでしたら小話に行くところですが、今回は小話無しで続きます。
引き続きお楽しみいただければ嬉しく思います。
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