第103話 魔女、神を知る
案内してもらったトイレから戻ってきた。この屋敷が広すぎてトイレまで行くのも戻ってくるのも結構時間がかかったよ。戻ってきた所でお茶と茶菓子を頂いて話を聞く態勢になる。
「さて、どこまで話したかの」
「私たち魔女と六神、それから神と呼ばれるものとの関係って所かな」
「そうじゃったの、それでは続きを──」
「続きはボクの方から話そうかな」
突然第三者の声が聞こえそちらへ目をやると、そこには狩衣姿の女性が立っていた。声を聞くまで全く気が付かなかったわけだけど、今も見えているはずなのに全く気配が感じられない。
「主様ー」
カルラの声でハッなり、そこでやっと目線を外すことができたのだけど、そのカルラからはポンッっという音が鳴り、煙に包まれたと思えば狐の姿に変化していた。ただその尻尾の数は一本しか見えない。そして狐の姿になったカルラは現れた女性へと飛びついた。
「おー、よしよし」
女性はカルラを受け止め全身をなでなでしている。しばらくなでなでしていた女性は満足したようで先程までカルラが座っていた上座へと座る。膝の上にはカルラの頭を乗せて撫でながらこちらに目を向けてきた。
「ボクは
「地神メイアス、つまりゆかり様は六神の一人、神様なので一柱ということですね」
「ゆかりでいいよ、様とか敬称に敬語とかいらないし、柱じゃなくて人の方が好みだね」
「えっと、はい、ゆかりがそれでいいならそうするけど、そんな適当で良いのかな」
「いいよ、もう分かっていると思うけどボクらも元は人だからね」
散々ヒントは貰っていたからそうなのかなとは思っていたけどね。本人から答えを聞くとは思ってもみなかったよ。
それにしても気配が無い、希薄といったレベルじゃなくて本当に感じられないんだよね。まあそれはそういうものとでも考えておけばいいのだけど、急に現れた理由はなんだろうね。
「ボクがここに現れたのが不思議って感じかな。まあそうだね理由としては、この場所をカルラがボクにとっての聖域にしてしまったからなんだよね。だからこの神社の敷地内ならボクは簡単に顕現できるんだよ。顕現出来ると言っても、いまエリーが見ているように今のボクは分体だから、何が出来るってわけでもないけどね」
「そうなのね、それでゆかりはわざわざ現れたのはなんでなのかな」
「それはちょうどカルラが六神について話をしようとしていたからね、その本人から聞いたほうが早いと思ってさ」
そんなわけで、神本人から色々と聞くことになりました。予想はできてたけど概ね私の考えていた通りといった所だね。
六神は元々人だった、人から魔女となり神となったわけだ。つまりは私たち魔女とは次代の神となるための前段階だということだね。そして魔女が六人になった時に、ある選択を迫られるのだとか。
それは六神の管理している場所を一度壊し新たに作り直すか、それともそのまま管理地を存続させるかといった選択を。そう言った選択は過去何十何百と繰り返されてきていて、今のこの世界が形作られているみたい。前回の魔女たちも管理地の存続を願い、その結果六神を引き継ぎ新たな管理者へとなったようだね。
つまり私たち魔女も六人目が生まれた時に同じ選択を迫られるわけだ。私としてはこのまま存続を願っているけど、神になるのは御免被りたいな。まあ、まだまだ先なようだし今は考えないでおこうと思う。
ちなみに六神の管理地というのは、魔の森やドレスレーナ王国や小国家群のある大陸にあたる場所のことで、本来ならこの獣人大陸は含まれなかったらしい。だけど、この地をゆかりが聖域にしたためにこの地も管理することになったようだ。
ただしそのせいで色々と厄介なことが今起きているのだとか。詳しく聞こうとしたけど後で話すと言われてしまった。そのことがきっと私をこの地へと連れてきた理由のひとつなのかもしれないね。
六神の管理地という事でわかっているだろうけど、この世界には六神と同じような管理者がたくさんいるようだ。そしてそういった管理者がそれぞれの土地を管理しているらしい。
六神が世界全部を管理しているんじゃないのねと言ったところ。「この世界は広いからね、ボクたち六神だけじゃ管理なんて無理だよ」という返答をいただきました。まあそうだよね、元の世界でも国ごとに信仰されている神がいるわけだし、世界全体を六神で管理するなんて無理ってのはわかる。
「君たち魔女が六神になるまでにはまだまだ時間はあるから、それまでは好きに生きると良いよ。あっ、ちなみに魔女という呼び方を決めたのはボクたちじゃないからね。それは最初の一人が魔女と呼ばれ自ら名乗ったことでそうなったんだよ」
「そうなのね」
特に呼ばれ方に思うことはないのでいいのだけど、むしろ聖女や聖人などと呼ばれるよりは全然いいよね。
「あとは、そうだね。本題に入る前になにか聞きたいことはあるかな、答えられることなら答えてあげるよ」
んー聞きたいこと、特に無いよね。それに下手に知ってしまうと楽しみがなくなるというか。目の前の姿が分体なら本体はどこにいるんだとか、六神以外の神ってどんなのとか興味はある、興味あるんだけど多分答えてくれないか、知らないって答えが返ってくる気がする。
「あるにはあるけど、知ってしまったらつまらないから聞かないでおくよ」
「あはは、そうだね、わかるよその気持、楽しみは後にとって置かないとね」
「そういうわけだから、そろそろ私をここにつれてきた理由なんかを聞きたいかな?」
「そっか、じゃあエリーを呼んだ理由とボクのお願いを聞いてもらおうかな」
ゆかりはそう言いながらもカルラを撫で続けている。撫でられているカルラは気持ちよさそうに目を閉じ眠っているように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます