第98話 魔女、騎竜に騎乗する
キッカとダイゴが迎えに来たと宿の人に呼ばれて表に出ると、そこには二人とキャプテンが待っていた。キャプテンの服装がキャプテンコートから変わっていて、ダイゴと同じような旅装になっている。
「おはよう」
「おはようございます」
私とティッシモが挨拶をすると、キッカたちも挨拶を返してくれる。
「それでキャプテンはどうしたの?」
「それなんだが、俺も着いていくことに決めた」
「いいの?」
「エリー様のお連れ様としてなら問題ないかと」
「という事で、エリー頼む、俺も連れて行ってくれ」
「一応聞くけど目的は?」
「そりゃあ、冒険家を名乗ってる身としては、知らない風景を見たいと思うのはおかしなことじゃないだろ」
「まあ未知を知りたいって、その気持はわかるかな。私もそんなところはあるからね。それで船と部下はどうするの?」
「船は相棒に管理を任せている、あの船は特殊でな登録している俺と相棒にしか動かせないようになってるから盗まれる心配はない。部下は十分な金を渡しているから少し長めの休暇だな、気に入らなけりゃ他の船に乗って大陸に戻るようには言ってる」
「そんなのでいいんだ」
「いいんだよ」
さてどうしたものかなと言っても、着いてきたいなら好きにしたらといった感じかな。それに着いてきてもらったほうが私に取っては好都合かな。帰りの船のこともあるし、あの船を作った人のところにも行ってみたいからね。
「わかった、それじゃあ一緒に行きましょうか」
「よろしく頼む。それとだな、様とかつけたほうがいいか、なんか偉い感じっぽいよな」
「そのへんは好きにしていいよ、さんでも、ちゃんでも、何もなしでも」
「あー、じゃあエリー、よろしく頼む」
「アダルもよろしくね」
こうして私、ティッシモ、キッカ、ダイゴ、アダルの5人で旅をすることになった。私とティッシモも着替えたほうがいいのかと聞いた所、そのままでも構わないと言われたのでそのままです。アダルは流石に持っている服が陸での旅に適してないということでキッカに用意してもらったみたいだね。
「それではエリー様、ティッシモ様、アダル殿こちらをお持ち下さい」
キッカが一人一枚、木製の長方形の木札を差し出してきた。
「こちらは、この国での身分証となりますので無くさないようにお願いします」
「ありがとう」
それぞれが受け取り、それぞれが収納にしまいこむ。
「それでは、都へ向かいます。皆様は騎竜には乗れますか?」
「乗ったことないね。そもそも騎竜って見たこと無いんだけど」
「私もないですね、エリーさんと同じで見たこともないです」
「俺はあるぜ。見た目は翼以外が鱗の鳥だな」
「では、まずは騎乗の練習ですね、着いてきて下さい」
キッカの後について移動する、途中で港と街との間にある門をくぐり抜けてさらに街の外へ向かう。キョロキョロと街並みを見ていると、港の中同様に木造の平屋と石造りの建物が混在している。
大通りの道幅は結構広くて、馬車なら三台は並んで走れるくらいありそうではある。道行く人はみんな獣人のようで耳やら尻尾を普通にさらして歩いている人しかいない。キッカとダイゴも今は被り物をしていない。
パッと見た感じでは、特にあっちの大陸と生活様式は変わらないように感じられた。暫く進むと目的地に着いたのか、柵に囲まれた場所にでた。柵の中にはさっきアダルが言ったような鱗の付いた鳥がいるのが見えた。
なんと言ったらいいのか迷うけど恐竜のラプトルの手を翼にしたとでも言えば良いのかな。私たちが騎竜を眺めているうちにキッカが交渉を済ませ店の人を連れてきた。
「乗られたことがないということですが、これといったものが無いようでしたら、少し触れ合ってから選んで下さい」
という事で、面接の開始である。騎竜は魔物に分類されるので動物に嫌われる私でも特に怯えることもなく触れることが出来た。ダイゴの体格で乗ることが出来るのかなと思ったけど、聞いてみるとかなり力強いので、ダイゴでも乗れるということだった。
何匹かと触れ合った結果、私はツバサが黒、他の部分が白という変わった羽の騎竜を選んだ、騎竜も私を気に入ってくれたようである。なんだろう、動物じゃないとはいえこうも生き物に嫌われないって良いことだね。
ちなみにティッシモは灰色羽のを選び、アダルは赤い羽のを選んだ。騎竜てなんだかすごくカラフルだよね。キッカはオレンジ色のだし、ダイゴは茶色のだしね。他にも青やら緑やらもいる。
どうやら騎竜はその人の最も得意な属性と相性がいいようだ。店の人によれば、私の選んだ白黒の騎竜と相性がいいなんて珍しいを通り越して初めてだということだった。
それぞれの騎竜が決まったところで出発することに、まだ昼前という事で今から進めば日が暮れるまでに次の街には着きそうだということで出発した。
騎竜の乗り心地は意外と悪くなかった。あまり上下に揺れないのは逆に不思議だったけど、これが騎竜の特性らしいのだ。騎竜と乗り手の間で微量な魔力のやり取りがあり、それによって人竜一体とでも言えば良いのか、そういった感じになるらしい。そのおかげで、揺れなどは殆ど感じられなくなるようだった。
そういったわけで、騎竜と相性の良い属性かどうかでこの乗り心地は変わるみたいだね。結局お昼は食べずに走り続けたわけだけど、疲労などは全くといっていいほど感じられずに予定通り次の街へ到着した。
騎竜自体も相性の良い魔力の交換のおかげか、ずっと走りっぱなしだったはずなのに疲労は見受けられなかった。なんだかすごくこの騎竜を気に入ってしまった。買い取ることって出来るのかな?
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