第92話 魔女、方針を決める

今回、話の中で地図が出てきますので適当にそれっぽい地図を用意しました。

あくまで暫定ということでお願いします。

右の大陸も獣人大陸も周りに陸地がある事になってます。

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/icR3LW9e

ペイントツールくらいしかないので、細かい点は適当に流してくださいませ。


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 翌日の早朝、私とティッシモが借りている家へダイゴとキッカがやってきた。


「朝はまだ食べてないよね」


 私はそう言ってご飯とお味噌汁をよそってお箸と一緒に二人の前に置く。


「これは、米と味噌汁ではないか。この国で食えるとは思っても見なかった」


「エリー様、このような貴重なもの頂いてもよろしいのでしょうか」


「キッカはその敬語はやめようね。それとご飯冷めちゃう前に食べなさい、私とティッシモはもう食べちゃったから全部食べてもいいよ」


 私がそういうと、二人は手を合わせて「いただきます」と言って食事を始める。その間に緑茶を人数分入れてみんなの前に置く。しばらくお茶を飲みながら待っていると、満足したのか箸をおいて「ごちそうさまでした」と頭を下げてきた。


 用意していたお米とお味噌汁はきれいに全部無くなっていた。とりあえず魔法で鍋や食器に箸などを纏めて洗い、これまた魔法で乾かしてポシェットにしまう。


 お茶を追加で入れ直した後に、座ってお茶を一口飲んでからダイゴとキッカと向かい合う。一応昨日の晩にティッシモとは話しを済ませておいた。


「さてとあなた達と共にあなた達の大陸へ行くのはまあ良いのだけどね。その前にいくつか聞きたいことがあるのだけど良いかな?」


「何なりとお聞き下さい」


 ダイゴは相変わらず置物のように座っていて、キッカが話しを担当するようだ。


「それじゃあまずは、あなた達ってどうやってここまで来たの? 獣人大陸とこの大陸って基本的にやり取りってないよね」


「獣人大陸、我々はカトレアと呼んでいる大陸ですが、全くやり取りがないというわけではありません。魔の森と小国家群の近くに、夜見島と呼ばれるそこそこの大きさの島があるのですが、そこを経由しての取引はそこそこあります」


「へーそんなのがあるのね、つまりはそこを経由してここまで来たってことだね」


「はい、夜見島から小国家が集まっている所を超えたどり着きました」


「それじゃあ、なんとかしてその夜見島まで行けばカトレアには渡れるってことだね」


「そうなります」


 しばらく考える素振りをしてみるが、元々なにか目的がある旅でもないからね。今のところ行ってみたい場所もないしカトレアに行くのも良いかもね。問題はどうやって行くかだね。正直小国家群は面倒事しかなさそうだから避けたいけど、そうするとかなり遠回りになっちゃうわけだ。


「まあ、行くのは良いけど、小国家群は通りたくないんだよね、そうなるとかなり遠回りになるのだけどそれも避けたいよね」


「そう、ですね、特に急ぐ必要もありませんが年単位となると色々と厳しいですね」


「だよね、そうなるとだ、魔の森を突っ切るかなんとかして船で魔の森を避けてその夜見島まで行くかだね」


「そうなりますね」


 私は紙を取り出して鉛筆で記憶を頼りに大まかにこの周辺の地図を書き記す。そして夜見島の大体の場所をキッカに記してもらう。


「とりあえずこのまま海沿いに進んで、どこかの港で夜見島まで行ける船がないか探そっか。それでも無理そうなら魔の森を通って行くしか無いね」


「それしかなさそうですね」


「よし、それじゃあそういう事で行こうか。村長さんには私が挨拶しておくから、準備ができたら村の入口に集合ね」


「かしこまりました」


 立ち上がったキッカだが、座ったままのダイゴに蹴りを入れている。


「おいこら脳筋クマ、寝てないで行くよ」


「うごあ、お、おう話しは終わったか」


「終わったよ、家の片付けを済ませて旅の準備をするよ」


「おう」


 キッカとダイゴが出ていくのを確認して私とティッシモは立ち上がり、一度だけ部屋を見回す。特に忘れ物もないし家の状態もいいだろう。家に関しては私たちが借りる前よりもきれいになっていると思う。


「じゃあ村長さんに挨拶をしに行こうか」


「はい……、本当に良かったのですか?」


「まあそのうち行こうとは思っていたからね、それが少し早まっただけだよ」


「少しですか、エリーさんのことですからその少しは年単位な気もしますが」


「あはは、流石にそれは、どうだろうね。この大陸も広いからね、このまま東に進んだらそれこそ何年で一周できるのだろうね」


「一周ですか? 世界の果てのその先に進むと世界を一周することになるのですか」


 一瞬何を言っているのかわからなかったけど、そうかティッシモはこの星が丸いって事を知らないってことか。そのうちこの辺りのことも教えてあげたほうが良いかな? だけど教えるより自分で体験させるのも良いかもしれないね。


 村長さんに挨拶をして村の入口に向かう。村長さんには昨日のお肉とお酒のお礼を改めて言われた。村の入口に行くとすでにキッカとダイゴが待っていた。


「お待たせ、それじゃあ行こっか」


「ええ」


「おう」


「はい」


 進路は東、このまま北に行って海沿いを行ければ良いのだけど、北には山脈があって多分一度東に抜けてから海沿いに進まないと駄目なんじゃないかな。私一人なら空を飛べばなんとでもなるけどそうもいかないからね。


 まあ、元々東の港を目指していたわけだから良いんだけど。途中で乗合馬車でもあれば利用するのも良いかもしれないね。

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