3章 魔女、王都へ
第63話 魔女、のんびりする
どなどなどーなーどーなー……、これはもう良いですね。別に荷馬車ではないですし、むしろキャビンの中はすごく広いのですよ。例えるならリムジンのような広々空間、リムジンとか乗ったこと無いですけどね。
どうやらこのキャビンは魔導具で出来ているようで、見た目と中身の広さが違っている。同じ竜車が三台連なるように走っている、一台いくらくらいするのか知らないけどかなりいいお値段はすると思う。
そしてキャビンを牽引しているのは地竜と呼ばれる四足歩行の竜種だ。見た目はフリルの無いトリケラトプスっぽいのだけど、立派な角が縦に二本頭部に生えていて体表は鱗で覆われている。
この地竜って全速力で走れば馬の三倍ほどの速度で走れるらしい。今は護衛の騎士もいるので馬が早足するくらいの速度で走っているけど、キャビン内には振動一つすら伝わってこないのはすごいと思う。
そんなわけで王都への旅は順調に進んでいる。普通の馬車だと半月はかかる距離をこの竜車だと大体三分の二くらいに縮めることができるとか。なんでこんな竜車に乗って王都に向かっているかは、アルバスさんの依頼が関係しているのだけど、それにしても用意が良いよね。
◆
「エリーに一つ聞きたいことがあるのですが良いでしょうか」
馬車の中でベルダの研究資料を読んでいると、同乗しているカルロから声をかけられた。
「んーなあに? 答えられることなら答えてあげるよ」
「エリーはあの骸骨、アルベルでしたか、その彼らのダンジョンコアを壊す時素手で壊してましたよね、あれはどうやったのかと思いまして」
同乗しているアーサとセーランにリリも興味があったようで、暇つぶしに読んでいた本から顔を上げてこちらの話を聞いている。
「そう言えば教えてあげるって言ったね、あれは
「魔纏ですか、それってどういうものなんでしょうか」
「カルロは身体強化を使えるよね」
「はい」
「身体強化っていうのはわかっていると思うけど、魔力回路に沿って流れている魔力の流れを早くすることで肉体を活性化させるというものだよね」
「そうですね、詳しい理論などはわかりませんが、多分そんな感じで使っていると思います」
カルロは感覚派ってことか、まあ使えてるなら詳しい理論とか必要ないからね。
「魔纏というのはね、身体強化とは違い魔力を体外に出した上に、武器などを包みこんで使う技術のことだよ」
「体外にですか……」
「まったまった、今試そうとしたでしょ、駄目だよ危険だから」
「危険ですか?」
「下手に使って制御に失敗したら魔力が内側から破裂しちゃうからね」
「それは、危険ですね」
「まあそうだね、これもなにかの縁だと思うしカルロ達にちゃんと教えてあげるよ、アーサもリリも覚えたいでしょ」
「ワタシも良いのですか?」
リリが遠慮がちに聞いてきたけど頷いてあげる、別に隠すようなものでもないからね。
「それとセーランは別に鍛えてあげる、セーランは魔術を使えるようになりなさい」
「魔術ですか? でも私は神官なので魔術とは相性が悪いと思うのですが」
多分そうだろうなとは思っていたけど、今の時代の神官は祝福と魔術を別物と考えているようだね。
「その辺りも含めて少しだけお勉強ってところかな、まあ悪いようにはしないから」
「はあ、そうですか、よくわかりませんがお願いします」
「そういうわけで、次の休憩の時に魔纏については教えてあげるから、今は試そうなんてしないでね」
「わかりました」
その後は再び読書に戻り、窓にかかっているカーテンをめくり外を見ると広大な麦畑が目に入る。大体の街の近くには麦畑があるので、そろそろ街が近いことがわかる。時間的に今日は次の街で一泊する流れだろうね、その合間にでも修行をつけてあげましょうかね。
◆
街に到着して領主の館へ向かう面々を見送り、私とリリは街の宿へ向かう。余り貴族との関わりを広げたくもないし、広げる意味もないと思っているので毎回私は途中で降ろしてもらって街の宿を利用するようにしている。
毎回連絡役として同行させられているリリには申し訳ないとは思うけどね。あとは屋台で食料を買いだめする意図もあったりする。どの街の屋台も食料品の値段は大体同じ感じで、たまに珍しい物が少し高いくらいかな。
残念ながらお米は屋台などでは売っていないけど、貴族御用達の食料品店では取り扱ってたりする。聞いた話では貴族の中でもファンが居るようでここ最近は取扱量を増やしたということだった。
もしかしたらと思わなくもないけど、確証はないのでそれ以上は聞かなかった。そうほいほい転生者や転移者がいるわけでもないだろうし、きっとただのお米好きの貴族がいたって落ちだと思うからね。
宿代などはアルバスさんが出してくれているし、リリの身分証があれば宿泊拒否されることもないので助かっている。リリはリリで堅苦しい場にいなくていいし、高級宿のほうが気楽でいいと言っているので結果的には良かったのかもしれない。
そして泊まる宿なのだけど、ガーラより王都方面には今のところ全部の街にガーラの街で泊まった高級宿のグランゴルドがあるようで、毎回そこを利用させてもらっている。やっぱりお風呂がないとね。
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