小話 求む、使い魔 希望編
ガーラ領を出てしばらく経ちました。竜車は揺れも少なく広々としているので特に苦にはならない。ちょうどいい具合にアルダとベルダから引き継いだ書物もあるので時間つぶしもできるからね。
竜車の旅は急ぎといっても地竜を潰さないために適度に休憩をはさみつつの旅ですね。そんな旅の途中ふと思いついたことがあります。
皆様は魔女と言ったら何が思い浮かびますか? 鉤鼻でしょうか、空飛ぶほうきでしょうか、黒いローブととんがり帽子でしょうか、それともグツグツと煮えたぎった謎の鍋でしょうか。
それらも魔女と言われたら思い浮かぶものだと思います。ですが魔女と言えばあれですよ、使い魔です。フクロウだったり、黒猫だったり、はたまた蛇だったりと色々いますよね。そうです、私はなんだか急に使い魔が欲しくなったのです。
今から語るのは旅の途中で、ふとした思いつきで始まった使い魔探しのお話です。
◆
「エリーこんな路地裏で何をやってるんですか? 変な所に行くと絡まれたりして危ないですよ」
「んー、カルロとセーランかー、そっちこそどうしたの二人でデート?」
「も、もう、そんなのじゃないです、ただのお買い物です」
「(僕はデートのつもりなんだけどな)」
カルロのそんな呟きが聞こえたけど、セーランには届いていなかったようだ。それにしても見つからないね。
「それでエリーは何を?」
「ちょっとね、野良猫でもいないかなと思って探しているのだけど、全然みつからないんだよね」
「野良猫ですか、先程あちらで見かけたような」
「ほんと? どこ? どっち?」
「まだいるかはわかりませんが案内しますよ、セーランもそれでいい?」
「時間がかかるものでもないですし良いですよ」
カルロとセーランに案内されて、中央広場のような所にたどり着いた。中央には噴水とちょっとした緑のベンチが置いてある。
「いますね、野良かどうかはわかりませんけど」
「おー、いたね、カルロもセーランもありがとう」
猫はベンチの上で丸くなっている、色は黒一色で魔女の使い魔としてはお誂え向きではないだろうか。
「それは良いのですが、エリーはどうして猫を探しているのですか?」
「ちょっとね、使い魔が欲しいなと思ってね」
「使い魔ですか、エリーさんはテイムができるのでしょうか」
「使い魔っていうのはね、テイムとはすこし違う感じなんだよね。テイムっていうのは相手を屈服させて従わせる感じだし魔物相手に使うものだからね。使い魔というのはね、魔物じゃなくて動物が対象なんだよ、なんて言ったら良いかなペットの延長線上みたいな感じかな」
「ペットですか、なんとなくわかるようなわからないような」
セーランと話しながら、ゆっくりと丸くなって寝ている猫に近寄っていく。ある程度近づいた所で猫が急に起き上がりこちらを見た……と思った途端に飛び上がるように全力で逃げていった。
「はぁ、やっぱりだめかー」
「その感じですと何度か逃げられているようですね」
カルロが先程逃げた猫をどうやってか捕まえたようで抱きながら近寄ってくる。猫の方はなんとか逃げ出そうとしているようですごく暴れている。
「ごめんね、せっかく捕まえてくたようだけど可哀そうだから逃してあげて」
「使い魔にしなくて良いのですか?」
「使い魔って無理やり作るもんじゃないから、相性もそうだけど信頼関係がないとね。そこまで嫌がられたら無理なんだよね」
猫はカルロの腕から逃げ出すとセーランの後ろへ回り、私をシャーと威嚇した後逃げていった。仕方がない街の野良猫は諦めよう。
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