小話 火龍とお酒
久しぶりに友人が尋ねてきたようだ。火龍山にある寝床から我は起き上がり友人を出迎える。
『久しいのエリーよ、数年ぶりかの』
「五年ぶりくらいかな、ドラグニスは元気にしてた」
出会ってから全く変わらぬ姿の魔女であるエリーが歩いてくる。
『それで今日は何用じゃ?』
「今日はね少しお願いがあってね来たんだよ」
『ほう、願いとな。その願いとは?』
「それなんだけどね……」
エリーはそう言ってどこからともなく大きなガラスの容器を取り出した。そのガラスの容器はわしが入れるくらいの大きさを持っていた。このようなガラス瓶をどうやって作ったのだろうか。
『この大きなガラス瓶がどうしたのじゃ』
「ねえ、ドラグニスに前変わったお酒の話ししたよね」
『変わった酒、変わった酒、蒸留酒のことかの、ドワーフの火酒のがその方法で作られているとかいうやつじゃったかの』
「そっちじゃなくて、ほらハブ酒の話ししたと思うんだけど」
『ハブ酒……、おぉ、たしかに聞いた覚えがあるの、確かハブという蛇を長年酒につけて作るんだったかの』
「そうそう、それそれ」
『作り方は血抜きをして、臭腺というものと内蔵をとりだ……』
「うんうん、そうそう」
『…………』
「…………」
『……え?』
「私少し思ったんだよね、ハブ酒みたいに龍をつけたお酒って美味しいのかなって」
『え、エリーよ冗談はよしてほしいのじゃが』
「だからね、ドラグニスには、すこーしこの瓶の中に入って貰えないかな?」
ジリジリと後ずさるが、それに合わせてエリーがジリジリと近寄ってくる。くるりと振り返り全力で逃げるために飛ぼうとした……が、尻尾を掴まれて逃げれなかった。
『や、やめるのじゃ、我はまだ死にたくないのじゃーー』
エリーが我の尻尾を掴んだままズルズルと巨大な瓶へ向かって歩いていく。
◆
はっ!
目が覚めた。どうやら眠っていたようだ。何か恐ろしい夢を見た気がするけどよく覚えていない。エリーが出ていたような気がするが、どんな夢だったのだろうか、思い出そうとしても寒気がするだけで思い出せないでいる。
「やっほー、ドラグニスいるー?」
ふむどうやらエリーが久しぶりに尋ねてきたようだ。他にも見知ったものが一緒に来ておる。
『エリーとドグラか、今日はどうした』
「ドグラが作ってたお酒がいい具合にできたから一緒に飲もうと思ってね持ってきたんだよ」
ドワーフのドグラが作った酒はうまいから大歓迎じゃの。我はエリーとドグラが待っている場所にあるき出そうとした所で、脳裏に不吉な映像が浮かび上がった。首を振ってその謎の映像を振り払い歩く。
「よいしょっと、これなんだけどね流石に私とドグラだけじゃどうにもならないからね、ドラグニスにもおすそ分けだよ」
そう言ってエリーが巨大な樽を取り出して置いた。その樽は我が二人ほど入れるくらい巨大であった。
『ひぅ』
口からそんな声が勝手に漏れていた。
◆
sideエリー
「あれ? ドラグニスどうしたの? おーい」
「ふむエリーよ、どうやらドラグニスは気絶しておるようだぞ。お主、なんぞ変なことをやったのではないか?」
「えー、何もしていないよ……、ほんとだ立ったまま気絶しているね。なんでだろう?」
「さあな、仕方がないドラグニスが起きるまで適当に飲んでおくか」
「はぁ、訳がわからないよ。まあ良いけどね飲んでいたらそのうち起きるかな」
ほんとドラグニスはなんで気絶したんだろうね。美味しいお酒の入った樽を出しただけなのにね。ドラグニスより大きな樽だからびっくりしたのかな? 樽の中にドラグニスを放り込んだら目をさますかな。
よし、ちょっと試してみるか。この後、樽に放り込んだドラグニスが目を覚ました。
『我を酒で漬けても美味しくないのじゃーー』
という叫びが火龍山に響き渡った。
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