第61話 魔女、仕分けする
その後は五階に戻り、設置されたままの門をくぐって地上へと戻った。外はすっかり夜になっていたのだけど、カルロやリリがいつまで経ってもダンジョンから出てこないということでちょっとした騒ぎになりかけていたみたい。外に出てもダンジョンには変わりがなかった、ダンジョンコアを壊してもすぐにダンジョンが崩壊するということはないみたいだね。ダンジョンコアがない上に、管理するものがいなくなったことで、今後どうなるかは分からない。
一応リリが上司に報告して対処すると言ってくれたので、砕けたダンジョンコアは渡しておいた。流石に私もダンジョンコアに関しては門外漢なので治したりはできない。それができるのは制作者であるあの変態だけだろうね。リリと別れた私たちは宿へと戻った。宿の人も戻ってこない私たちを心配してくれていたみたい。とりあえずご飯を用意してもらっている間に、着替えなどしておいでと送り出された。
そう言えばダンジョンに入る前に軽くつまんで果実水を飲んだ以外はダンジョンで紅茶を飲んだだけで、食事をしていない事に今更ながら気がついた。ダンジョン内では空腹を感じなかったからもしかしたらダンジョン内ではそういうものなのかもしれない。部屋に入る前にカルロとアーサとセーランに洗浄魔法を使って汗や汚れを落としておく。今からお湯を借りて体を拭くのもしんどいだろうからね。カルロたちからお礼の言葉を貰ってセーランと一緒に部屋に入ってささっと着替えを済ませる。
脱いだ服は私が預かる形でまとめてポシェットに入れておく。後で一緒に洗ってあげるよといった所申し訳無さそうにしていた。他にも洗いたいのあるなら後で渡してねと言った所、恥ずかしそうに収納袋から何日か分の下着なども出してきたので預かることになった。収納袋には衣服を一週間分ほど入れているようだけど、下着とかはなかなか洗うタイミングがなかったのだとか。まあカルロとアーサも幼馴染とは言え男の子だからね、彼らの前で下着を洗ったり干したりなんてできないよね。
みんな流石に疲れ切っていたのか、余り会話もなく軽く食事を済ませて詳しい話は明日にするということで解散になった。私はセーランが布団に潜り込んで寝たのを確認してから、魔法で洗濯を済ませる。ふふふ、セーランって着痩せするタイプみたいだね、それに結構可愛い下着を持っているようだった。今まで貴族の人の下着なんて見たことなかったけど、貴族の下着を見る限りは裁縫技術もそこそこ発展しているみたい。洗濯も終わり、セーランの服をきれいに畳んでテーブルの上に乗せておく。さてと私も眠りましょうか、それにしもてなんだかすごく濃い一日だったね。ん〜っと伸びをして布団に潜り込む。おやすみなさい。
◆
揺れる馬車の中、横には騎士の装いのリリと神官服のセーランが座っていて、反対側にはカルロとアーサが座っている。今の私の心情を言い表すのは簡単だ。そうあれですね、どなどなどーなーどーなーといえばわかってもらえるでしょうか。うん、どうしてこうなったのだろう。朝起きてみんなで朝食を食べた後に、お茶を飲みながらこの後どうしようかという話しになった。そこでダンジョン内で手に入れた武器などの事や、アルダとベルダから受け取った収納袋の存在を思い出したので、中身を確認してから分けようかという話になった。そんな所にやってきたのが騎士の格好をしたリリと他数名の騎士達だったわけだけど、あれよあれよという内に豪華な馬車に連れ込まれ今に至るわけです。目的地はガーラ領主の館ということで、ダンジョンについての話を聞きたいってことらしい。
「エリー、すみません」
「カルロが謝ることではないよ」
「いえ、その、エリーをですね、ダンジョンに一緒に行こうと誘ったのは、僕の勘がこのことを予見したからなんですよ」
「あー……、そういうことだったのね、まあ気にしなくていいよ、カルロが関わってなかったとしても結局似たような流れになっていたと思うからね」
アルバスさん関係で監視も付いたままだったからね。流石にダンジョンの仕様上、中までは監視できなかったようだけど、結局そのうちダンジョンに何らかの変化が起きれば関連付けられてただろうからね。高速馬車ではないので到着までまだ時間はかかりそうなので、今のうちにアルダとベルダの収納袋の中身をチェックしてみようと思う。まずはアルダの収納袋からごそごそと漁ってみる。
最初に取り出したのは書物の類だけど、さすが2000年前の物と言って良いのか今ではなかなかお目にかかれなさそうな物が多数あった。みんなは余り興味がないようなので自分の収納袋に入れておく。暇なときにでも読もうと思う。次は当時の貨幣や宝石が多数、これらは山分けにすることにした。カルロたちは遠慮していたけどちゃんと最後は手伝ってくれたわけだし正当な報酬として受け取ってもらった。
残りは当時の衣服とか、保存食やお酒なんかが出てきたけど、この収納袋は保存の効果が切れていたので駄目になっていた。もしかしたらお酒なら行けるかもしれないけど、試すわけにもいかないのでそのまま破棄することになりそうだ。アルダの収納袋はこんな感じだった。続いてベルダの方なのだけど、こっちは保存の効果がまだ残っているようだ。中身はアルダと似たりよったりだったけど、あの美味しかった紅茶の茶葉や大丈夫そうなお酒のツマミになりそうなドライフルーツなんかも出てきた。
書物関係に関しては、アルダのほうが娯楽系だったのに対して、ベルダの方は研究書のたぐいが多かった。こちらの貨幣や宝石は再度山分けにしたのだけど、これだけでも一財産になりそうだね。後はポーション類が結構入っていた。エリクサーはなかったのだけど、万能薬的なものや解呪に特化したもの、他にも様々な毒の類に効くものなんかが出てきた。こちらも山分けにしようとしたのだけど断られた。効果が定かではないポーションのたぐいは流石に使うのはためらわれるし、2000年前の物がちゃんと効果を発揮するかもわからないということで、私がもらうことになった。ちゃんと使うこともできることと効果も説明したのだけどね。材料が貴重すぎて手持ちのなかったポーションが補充できて私にとっては良いことだけどね。
最後に一つだけ内緒で私の物にしたものがある、見た目はただの魔石なのだけどね。なんでこんなもの収納袋に入れたままにしていたのかわからないけど、厄介事にしかならないと思うのでこのまま私のポシェットに永久保存になると思う。ダンジョン作成キットと言われるこの魔石は。仕分けと振り分けが終わった頃にはガーラの街にたどり着き、領主の館も目の前に迫っていた。さてと、私に一体何の話があるのだろうね、ダンジョンのことだとは思うけど、実際はどうなのかな。
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